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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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後半部分はちょっとえっちい感じですので注意。でもあくまでちょっと。



「あ、ここ依頼で指示された場所です」
 携帯電話のフリップを閉じ、七代は後ろからついて来る燈治と雉明を振り返った。
「ちょっと待っててもらっていいですか? 今回の、花札の設置がちょっとややこしそうなので」
「おう、いいぜ」
「わかった。気をつけて」
「はーい」
 軽く手を振って、七代は一人開けた場所へ足を進める。七代が請け負っている依頼には花札を設置することにより生まれるエネルギーを使い、品物を精製するものがある。希少性が高いものほど、より複雑に配置しなければならない。こんな時同行者はただ待つことしかやることがなかった。
 まあ、危険はないみたいだからいいけどよ。配置する花札を探しているらしい七代を燈治は遠くから見つめる。しかしいつでも動けるよう身構えて。何が起こるかわからない洞の中だ。せめて安心して任務を遂行できるよう、七代の背中は守りたい。
「……」
 七代を見守る燈治を、横から雉明が見ている。かと思いきや、不意に燈治のほうへと一歩、二歩と近づいてきた。
 狭まる距離。無言の視線が突き刺さる。
 最初、燈治は耐えていたが、あまりに真っすぐな視線を向けられ「……おい、雉明」と口を出す。
「俺の顔に何かついてるか」
「いや、何もついていない」
「じゃあ離れろ。距離が近ぇ」
 一歩離れて燈治に言われ、雉明は「すまない」と素直に引き下がる。
「知りたいことがあって」
「知りたいこと?」
 なんだそりゃ、と燈治は眉を寄せた。知りたいことがあって、それがどう近づくことに繋がるんだろう。
 ああ、と雉明が至極真面目に頷いた。
「千馗が」
「千馗が?」
 七代の名前に、ますます燈治は眉間の皺を深くする。つい先日まで彼が生きるか死ぬかの岐路に立たされていた為か、七代のことになると、途端に燈治は心配になった。まさかまたろくでもないことを考えているんじゃないか、アイツは。
 苛立たしくなり、燈治は「千馗がどうしたんだ」と雉明に詰め寄った。返答次第では後で七代にも話を聞かなくては。
 雉明が答える。
「千馗が壇に近づくと、病気になるみたいなんだ」
「……は?」
 思ってもいなかった雉明の言葉に、壇はどういうことだ、と聞き返した。病気って、何の病気だよ。
「おれと千馗は札を通して多少の変化を読み取れる」
 雉明は右手を自分の胸に当てた。
「千馗が壇の近くにいる時、まず心の臓が速くなる。体温も僅かに上昇していた」
「……」
「それからとても緊張しているようでもあった。だからおれは風邪かと思って、千馗に聞いてみたんだが、何故かはぐらかされてしまった。もし重病だったらいけないと、こうして壇の近くに寄ってみたんだが――」
「……具合、悪くなったか?」
「ならない」
「ま、だろうな」
 近くによるだけで具合が悪くなるなどないだろう。そもそも燈治は健康に取り柄を持っている。風邪なんて、鎌鼬の箱の件を除けばここ数年かかったことがない。
 燈治から距離を取った雉明は、手を口許へやり「ならば何故千馗はあのようなことになってしまうのだろう……」と真剣に悩み始める。怜悧な容貌とは異なり、中身は天然である雉明に、燈治は開きかけた口を閉ざした。
 これは、言わぬが花だ。


「――ってそこで話が終わるの!? ばかなの!?」
 当時のことを聞かされ、七代は眼を剥いた。
「通りであの時にやにやしてると思ったら……! ばかですかあんたは!」
 七代は手近にあった枕を掴み、笑いを堪えている男に投げ付ける。殴りたい気持ちもあったけど、今は痛くて怠くて動けなかった。
 おっと、と軽々と枕を避け、燈治はかわりに冷たく濡らしたタオルを七代に当てる。
「言ったら言ったで怒るだろ。雉明に何吹き込んでるんですかーって」
「そうですけど!」
 あの純粋な眼差しで問われたら答えに窮するのは明らかだ。だけども。
「それとこれとは話が別ですぅー!」
 あの時にはもう燈治のことを意識していた。だけど呪言花札の件もあり、任務を優先していた七代は、必死に自分の気持ちを押し隠し、仲間として燈治と接していたのに。まさか、バレていたなんて。
 今だったら恥ずかしさで死ねそうだ。七代は大袈裟に嘆き、起こしていた上体をベッドの上に投げ出した。
「暴れんなって。身体が拭けねえ」
 顔を覆い悶絶する七代に軽く肩を竦め、燈治が言った。
「それにもうどうだっていいだろ。こうして俺とお前がここにいる。俺はそれで満足してるけど、お前は?」
「……」
 動きを止め、七代は指の間から汗ばむ身体を拭いてくれる燈治を見た。そしてまた悶絶する。
「どうしてそこで恥ずかしいことを言うのかな……。おれのからかいに一々反応してくれた壇はどこに行っちゃったの……」
「ま、慣れってところだな」
「悔しい。悔しすぎる」
 やりすぎた自分がばかだった、と嘆く七代に燈治が笑う。
「そうだな。お前がやりすぎたお陰でわかったこともあったし。――一々俺のやることに反応する楽しさってのもわかったしな」
 だから、と燈治が顔を覆っていた七代の腕を掴んだ。ぱっと開けた視界。精悍な顔付きで見下ろす燈治に、七代は顔を赤らめる。
「今度は俺から慣らしてやるよ。今までの礼も込めて、な」
「これは礼っていうより仕返し……んっ」
 言葉は最後まで続かない。重なる肌の体温や触れる指の動き目眩を起こしそうだ。
 多分おれが慣れるのは当分先だろうな。そう思いながらも、七代は素直に愛しい男の背中に腕を回した。



色んな意味で進化していく壇燈治でお送りしました

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