小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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「で……、何でいきなり台所なんですか?」
後ろからどんどん腰を押されて台所に入った七代は、困り顔で振り返った。
「決まっておろう」
七代をここまで連れてきた張本人――白が両手を腰に当て、当たり前のように言い放つ。
「妾のために何か美味いものを作るのじゃ!」
「ええー」
一方的な物言いに呆然とした七代に「最近零には焼きそばパンを作って、妾には何もくれぬのか?」と白は口を尖らせ睨み上げる。
白の言うとおり、七代は雉明に焼きそばパンを作って渡していた。しかし最近と言うには少し時が経ちすぎている。
「それに白にだってしゅわしゅわな奴あげたでしょう? この前だってうまい棒あげたじゃないですか」
あげた回数、頻度共に白の方が高い。そう指摘したら「それは其方の手作りではないではないか」と頬を膨らませた。
「妾は其方の手作りを食したいのじゃ。ええい、つべこべ言わずさっさと作らぬか!」
顔を真っ赤にさせる白に七代は察した。要は雉明にやきもちを焼いているらしい。雉明だけ手作りを食べられたのがそんなに悔しかったのか。そう考えると何だか白がとてもかわいらしく思える。
「もう、しょうがないですねー。もうすぐ夕ご飯ですし簡単なものだったら作りますよ」
「本当か!? なら妾はここで待っていよう」
ぱっと顔を輝かせ、白はキッチンテーブルの席に着いた。
「いや……居間かおれの部屋で待っててもいいんですよ?」
「ここでいいのじゃ。ほれ、早く作らぬか」
裾の余った足を椅子の上からぶらつかせ、白は急かす。そんなに待ちきれないのかな。七代は軽く肩を竦め冷蔵庫を開ける。後で清司郎さんに材料を使ったって言っておかなきゃ。中にある物を眺めつつ、ふと七代はあることに気づいた。
「食べたい物は何ですか?」
いったん冷蔵庫を閉め、七代は白に尋ねた。適当な物を作ったら、それこそ怒られてしまいそうだ。
わくわくと七代の挙動を見ていた白は、いきなり尋ねられ目を丸くする。
「何がか、じゃと?」
「作れる作れないかは別としてリクエストは聞いておかないとでしょ?」
「そうじゃな……」
扇子を唇に当て、白は明後日の方向を見遣り考える。そして思いついたようで視線を七代に向け、閉じた扇で自分の掌を軽く叩く。
「千馗、其方の好物がよい」
「へ? おれの?」
七代は自分を指さして首を捻った。白のために作るものがおれの好物でいいんだろうか。
白が頷く。
「其方の好物がよいのじゃ。妾は以前其方のことを知ろうとは思わなんだ。正当な血筋の主が故にな。……だが今になって其方を主と認めた妾は千馗のことをあまり知らぬことに気づいてしもうた。だから今から知りたいと思う」
「白……」
初めて出会ったときは封札師風情が、と手厳しさばかり見てきたのに。確かに白との間に絆を感じ、思わず七代の頬が綻んだ。
「何じゃその顔は。いいからはよう作れ!」
微笑まれ、照れ隠しで白は怒鳴る。つんとそっぽを向いて拗ねてしまった声に七代は「はいはい、かしこまりました」と恭しく頭を垂れ、冷蔵庫を開けた。
せっかく白がおれの好物を知りたいと言ってくれたのだから、とびきり美味しく作ろう。背中に視線を受け、七代は再び冷蔵庫を開け材料を吟味した。
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