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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 シャワーを浴びた燈治は台所の冷蔵庫から取り出したペットボトル二本を手に、自室へ戻った。まだ正午を回ったばかりで日は高いが、カーテンが閉められた室内は薄暗い。床には脱ぎ散らかされた二人分の服。僅かに漂う青臭い匂いが情事の後を物語っていた。
 後で換気しておかなきゃな、と思いながら燈治はベッドの縁に腰を下ろす。
「――千馗」
 毛布にくるまっている恋人の名前を呼んだ。すると、んん、と眠そうな声がして、もぞりと頭が動く。眠そうな眼が燈治を映した。
「飲みもん持ってきた。汗かいてるし飲んどけよ」
「……ん」
「どっち飲むんだ?」と燈治はお茶とスポーツドリンクのラベルが見えるように持っていたペットボトルを七代に差し出す。七代は腕を伸ばしてお茶のペットボトルを取った。肘を突いて上体を起こす七代の肩から、毛布が滑り落ちる。露わになった肌。首筋はもちろん、腕や胸――臍の近くやその下にも赤い鬱血の痕が刻まれていた。その全部を俺がつけたんだよな、と思うと燈治は気恥ずかしくなる。
 ペットボトルを開ける振りをして目を反らした。これ以上見ていたら、せっかくシャワーで流した汗をまた掻く羽目になりそうだ。
 後ろで七代がペットボトルに口をつけた。余程喉が渇いていたのか、あっと言う間に中身は半分以上減っていった。ふぅ、と一息つき「ありがとうございます」と燈治に礼を言った。さっきまでさんざん喘がせていたせいか、潤った喉でも少し声が掠れている。
「身体……平気か?」
 口に含んでいたスポーツドリンクを飲み、肩越しに七代を見て燈治が尋ねた。改めて見ても、七代の身体は所有欲独占欲まるだしの印がたくさん刻まれている。加減しなければと思いながら、途中で歯止めが利かなくなって。どれだけがっついてんだと燈治は自身の余裕なさを嘲る。
「あ……だ、大丈夫、ですよ」
 調子を訊かれ自分の身体を見遣った七代は、頬をさっと朱に染めて答えた。
「ちょっとだけその痛いところも、ありますけど。全然平気ですし」
「そ、そうか。でももうちょっと寝とけよ。どうせ今日は……泊まるんだし、よ」
「そう、です、ね。そうします」
 ありがとう、と空になったペットボトルを燈治に手渡し、七代は横になった。毛布をごそごそと肩まで引き上げ、じっと燈治を見上げる。何か聞きたそうな目つきに「どうした?」と燈治は七代の方へ座りなおして尋ねた。
「えっと、……あの」と七代はもじもじと視線をさまよわせ、やや躊躇いがちに言った。
「おれ、どうでした?」
「は?」
「その……おれ結構がりがりですし、抱き心地よくないだろうし……気持ちよかったのかなーって……」
 どうやらセックスの相手としてどうだったか、感想を求められているようだった。
 燈治はがりと頭を掻いて嘆息する。まさかそう聞かれるとは思ってなかった。ついさっきまでさんざん喘がせて揺さぶって――それでも心配になるなんて。
 返ってきた反応を、否定的に捉えた七代の顔色がさっと曇る。だから燈治は手っとり早く分かりやすい方法を取った。
 七代がもぐっている毛布を掴み、捲り上げる。露わになった痩身に刻まれた赤い痕の一つを指で押し「もうちょっとつけときゃよかったか?」と言った。肘を突き、七代の胸元へ唇を寄せ肌に吸いつく。微かな痛みと共に新たな痕を刻む。んっ、と震える七代に、また腹の奥底から引きかけていた熱が、あっと言う間に温度を上げて身体に回る。
 ベッドに乗り上げ、燈治は七代に覆い被さった。また汗を掻いてもシャワーで流せしまえば済む問題だ。今はこの鈍い恋人にこっちがどれだけ溺れているか、示す必要がある。
「どうせ泊まるんだし、いっそ枯れるまでヤるか?」
 見下ろされ瞬きをする七代に「そうなってもいいぐらいお前とヤりたいんだよ」と少し早口で言う。言葉にするのは恥ずかしかったが、それでも七代が「……そうですか」と笑ってくれたので良しとしよう。
 七代が燈治に向けて腕を伸ばした。燈治は彼の肌に触れ、お前じゃなきゃ駄目だと言わんばかりに再びその身体に溺れる。
 しばらく戻れそうにないな。口の端でくっと笑い、燈治は次に痕を刻む場所を探した。


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