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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 ベッドに寝転がっていた燈治は、起きあがって端に座り直す。おろした踵で床を突きながら、掌に収まっていた携帯のフリップを開いた。
 画面を注視する燈治の親指がボタンに触れては離れていく。ボタンを一つ押せば、七代との通話が繋がるがこれからする会話のやりとりを思うと、寸前で躊躇してしまう。
 だけど、迷い続けていたら目標が達成できない。ぐじぐじ悩むのは男らしくねえ。意を決し、燈治は通話ボタンを押す。
 耳に当てた携帯の受信部から呼び出し音が流れ、程なく「壇?」と七代の声が聞こえた。二日と聞かない日はないのに、どうしてかとても緊張する。
「どうかしたんですか?」
「いや、大した用じゃねえけど」
 思っていることとは裏腹な言葉が口を出た。いや、実際些細なのかもしれないが、燈治からすればかなり重大なことだ。
 上擦りそうになる声を低くするよう努め「明日お前暇かなって思ってよ」と言った。何のつもりもない、至って普通に聞こえるように。
「明日ですか? 暇ですけど」
 対して七代はのんびりした、いつもの調子で答えた。その後ろには白がいるらしい。誰と話しておるのじゃ、と尋ねる声がする。
 見物客がいるような感じに、燈治は本題を出す前に怯む。しかし、ここで引いたらまた同じことをする時に引っ込み癖がついてしまう。
「あー、その、なんだ」
 曖昧に言葉を濁し、ゆっくり深呼吸をする。
「明日お前が暇だったら、どっか連れてってやろうかと、思ってるんだが。ほら、言ったろ? お前をいろんな所に連れてってやるって。……だから、明日つき合えよ」
 深く吸った息を吐き出すついでに、ようやく言いたかったことが言えた。面と向かっていたら気楽に言えるのに、電話越しだと何故か緊張してしまう。電話だと、相手の反応が表情からうかがえないから。思いついたのが学校だったなら、すぐに七代の腕を引いて直で聞けただろう。
 しかし七代の反応はやっぱり変わらなくって。
「え? もしかしてデートのお誘いですか!?」
 電話越しでも息巻いている様子が伝わる。
 即座に「行きます!」と色よい返事を貰え、身体の力が抜けてしまった。
「よっしゃ。じゃあ行きたい場所考えとけよ。こっちでもいくつか選んでおくから」
「はい!」
 いくつか軽いやりとりをし、通話を切る。電話越しでも伝わるはしゃぎように燈治は分かりやすい奴だな、と笑みを堪えながら携帯を閉じた。
 だけどやっぱこれからは、直に聞くようにするか。やっぱりアイツの反応は直接見たいから。そう思いながら燈治は七代を連れていく場所はどこにしようか考えることにした。
 七代のはしゃぐ姿を想像する燈治の心はすでに明日へと飛び、自然と頬は緩んでいた。

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