小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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珍しく立場が逆になった。燈治は欄干に凭れて屋上の景色を眺める七代を見つけた。ぼんやりとしている背中は動かない。
「よぉ」と声をかけ近寄ると、ぴくりと肩を上げた七代がこちらを向いた。いきなり呼ばれた目が丸くなる。
「壇」
「羽鳥先生、驚いてたぜ。まさかお前が現国サボるなんてよ」
「おれだってそういう気分の時ぐらいありますよ」
溜息混じりに言い、七代は顔を前に戻す。近付いて隣に立った燈治は、頬杖を突く横顔の物憂さに眉を潜める。
うまい言葉が思い浮かばず黙ったまま冬の風に吹かれた。こんな時自分の口下手がもどかしくなる。
「……すいません」
七代が頬杖を外して身体ごと燈治に向き合った。
「八つ当たりしてしまいました?」
「八つ当たり?」
「モヤモヤしているからってそれを人にぶつけるのは違いますよね」
苦笑する七代の表情は、常日頃見せている芒洋とした柔らかさが欠けていた。それを埋めるように寂しさが表情に映る。
「本当に、どうでもいいことなんですよ。取るに足らないことなので……。後でちゃんと羽鳥先生にも謝ってきますから。だから」
もうちょっとだけたそがれさせてください。苦笑いのまま七代は言った。暗に一人にさせてほしい、と言葉に滲ませている。
覚えのある感情が燈治の胸によぎる。七代が転校した当初は、屋上にやってきた彼をそれとなく教室に戻らせるよう促していた。七代をきらっているわけではない。ただ近くに誰かがいることが煩わしくて。
相棒を自負していても、まだ七代と出会ってから一ヶ月と半分しか経っていない。心の内側の踏み込めない部分もあるのだと認識し、複雑な心境になった。
ここで無理をしても傷つけてしまうだろう。燈治は「わかった。でも風邪引くからあんまり長居すんなよ」と一度七代の肩をぽんと叩いた。そのまま頭を小さく撫で離れる。
「それから覚えておけよお前には俺がいる。もっと頼って……くれよ」
七代が小さく頷く。名残惜しさを感じつつ、燈治は校舎へ戻った。
扉を潜り、後ろを振り向く。再びぼんやり景色を眺める七代に、今度の休憩時間も会いに行こうと燈治は強く思った。
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