小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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頃合いを見計らって、ガスの火を止めた。最近は冷え込むから、今日は鶏肉と野菜のトマト煮を作ってみた。後は余熱で放っておけば出来上がるだろう。と鍋のふたを閉じる。炊飯器はあと数分で白米が炊きあがるし、冷蔵庫にはサラダが相棒の帰りを待っている。
一通りの準備を終え、燈治はギャルソンタイプのエプロンを取った。手を洗い、食器棚においていた携帯電話を開く。液晶画面には着信やメールはない。残業はないようだが、それでも帰りが待ち遠しくなってしまう。料理をする回数が増えて、その全てはもうすぐ帰ってくる相棒のために作っているようなものだったから。
「ただいま帰りましたー」
玄関の扉が開く音と共に、待ち望んでいた声が聞こえた。燈治は即座に玄関へ向かう。薄手のカーディガンにマフラーを首に巻いて、仕事から戻ってきた七代が「美味しそうな匂いがしますね」と寒さで赤くなった鼻をひくつかせた。
「ごくろーさん」
七代の鞄を受け取り燈治が「風呂か飯、どっちに……」と尋ねかけ、七代の腹部から空腹を訴える音がして笑った。
「飯にするか」
「……お願いします」
空きっ腹をさすり、頬を染めた七代はそそくさと靴を脱いで玄関をあがった。その背中に燈治は「手ぇ洗って着替えてこいよ」と声をかける。
「その間に飯の準備しておくから」
「はーい」
洗面所へ向かう七代にこっそり笑い、燈治はまず七代の荷物を置きに二人の部屋へ向かう。さぁ、すぐに残りを準備しないとな。
居間の中央で存在を主張するこたつに、室内へ足を踏み入れるなり七代は目を輝かせた。
「こたつ! こたつです!!」
七代は子供みたいにはしゃぐ。
「寒くなってきたからな」
炊き立てのご飯を乗せた盆を持って燈治は「ほら、飯にするから座れって」と七代を促した。はい、と大きくうなずき、七代はこたつに入る。暖かさに背中を丸くして手も突っ込み「みかんもありますか?」とわくわくした眼差しで燈治を見た。
「ちゃんと買ってあるから安心しろ」
「やった!」
「でもその前にきちんと飯食えよ。また仕事が立て込んでるんだろ。しっかり食って体力付けねえとぶっ倒れるぞ」
「はーい」
いただきます、と手を合わせ七代は燈治の用意した夕食を食べ始める。にっこり「おいしいです!」と絶賛されて、燈治は胸の奥がこそばゆくなった。
七代と暮らし初めて大分時がたつ。
燈治は大学に通いながらドッグタグのバイトをこなし、七代は封札師の仕事に忙しい毎日を送る毎日だ。今日こそ早かったが、時には数週間家を離れるときもある。寂しくないといえば嘘になる。だが、彼の帰る場所に自分が入れることを燈治は嬉しく思っていた。一番最初に七代へ「お帰り」と言えるのだから。
それに。
「――こら、千馗」
二人きりの場所、いろんな七代の姿を独り占めしてみられる幸せもある。
「起きろよ。んなところで寝たら風邪引くぞ」
燈治はこたつで横になった七代の枕元でしゃがみ、軽く肩を揺すった。疲れとこたつの暖かさですっかり眠る体勢に入ってしまっている。
無防備な寝顔はあどけない。キスをしたくなる衝動を抑え「寝るならちゃんと布団に入って寝ろ。敷いてやるから」と起こしにかかる。
七代は口をもごもご動かし「みかん……」と瞼を閉じたまま軽く頭を浮かせた。
「もう十分食べただろ」
こたつ板で山になったみかんの皮。このペースで食べられたら数日後にはもう一箱買わなければなくなってしまう。
「食べられないなら……ねる……」
七代の頭がことりと床に沈む。
「おいっ……ってもう寝たのかよ」
早いな、と燈治は後頭部を掻いた。これでは一人で歩かせるのは無理だろう。仕方なく燈治は七代の脇の下へ手を入れ、こたつから引っ張りだした。背中と膝裏に腕を回し、横抱きにする。
七代はすうすうと気持ちよさそうに寝息をたて、燈治の胸へ頭を凭れさせる。首筋がやけにおいしそうに見えた。
ったく無防備すぎるのも考え物だな。燈治は苦笑して七代の額にキスを落とした。
ま、起きてるときにゆっくりとな。燈治は愛おしそうに笑みを浮かべると、七代を寝かせるため居間を出た。
燈治が主夫ですね。
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