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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 燈治は澁川から受け取ったコーヒーを「お待たせしました」と乱暴に絢人の前へ置いた。とってつけたような敬語。そして睨みつける顔は、とてもじゃないが喫茶店でバイトをしている人間にはあるまじき表情だ。
 しかし絢人は涼しい顔で「ありがとう」とコーヒーを受け取る。余裕たっぷりの反応に燈治は不機嫌を募らせ顔をしかめる。
 凍り付く温度を察し「え、ええと……」と七代は言葉を探しながら燈治と絢人を交互に見た。困ったように両手を首の後ろにやって「えっと……お、おれの注文したカレーはまだでしょうか」と苦し紛れに切り出す。
「お、おなかがぺこぺこで。はやく食べたいなあーって思ってるんですけど?」
「だ、そうだよ、壇。千馗君を待たせてどうするんだい。僕に喧嘩を売る暇があったら、注文をこなすべきじゃないかな。新米バイト君」
「……ってめ」
 燈治のトレイを持つ手が震える。このままじゃまずい。冷や汗をかく七代はどうしようと戸惑う。しかしキッチンから「壇」と澁川が燈治を呼んだ。
 流石に澁川の呼び出しを無視できない燈治は「今行きます」とキッチンへ言い、そして絢人をぎっと睨みつけた。
「あんまり千馗にべたべたさわんなよ。――千馗、この変態に何かされたらすぐ呼べ」
 敵意をむき出しにして絢人を一睨みし、燈治はキッチンへと引っ込んだ。
「……やれやれ。独占欲が強くて千馗君も大変だね」
 絢人は肩を竦めて、運ばれてきたコーヒーを一口飲んだ。
「あ、あはははははははは……。……なんかすいません」
 燈治が絢人に対しつんけんな態度をとる理由の一端を担っている自覚のあった七代は、申し訳なさから小さく頭を下げた。つき合い初めて半年は経つが、未だに燈治は絢人や義王と顔を合わせては相手を牽制している態度を取る。燈治曰く「油断してるとどこでかっさらわれるかわかんねえからな」らしい。七代からすれば無用な心配なので呆れるしかなかった。おれがそんなに揺らぎやすい男だと思っているのか。
「ふふ、僕は構わないよ。これぐらいのことで物怖じしていたら情報屋なんて出来ないからね」
 恐縮して謝る七代に絢人は優しく笑いかけた。飲んでいたコーヒーをテーブルに戻し「それに壇は見ていて飽きないよ」と続ける。
「飽きない……ですか……」
「そう。例えば……」
 絢人がそっと七代の頬へ手を伸ばした。にっこり笑う絢人に、七代の目がきょとんと丸くなった。いったい何をするつもりなんだろう。
 のばされた指の先が七代に触れる寸前、すぐ近くでひゅっと音が耳を掠める。即座に絢人は手を引き、遅れてカレーライスがまたもや乱暴に置かれた。
「ほらね。分かりやすい」
「何がだよ。つーかテメエ千馗にさわんなって言っただろ」
 面白がって笑う絢人を燈治が威嚇するように言った。からかわれていることも知らないで。
「燈治さん……」
 哀れさ半分で燈治を見上げ、七代はしょんぼり肩を落とす。
「君たちは興味深いね」と笑う絢人と何故か落ち込む七代に、当事者だったはずの燈治は、一人状況を把握しそこね首を傾げた。

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