小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
身のこなしは素早いが、一度捕まえればこっちのもんだ。
江島神社参道の脇で、アキラは多少乱れた息を整えた。武術もたしなんでいるし、これでも鍛えているつもりだった。だがわずかな追走に息を切らすようでは、まだまだ未熟なんだろう。トレーニングの量を増やすか。
そんなことを思いながら、アキラは腕の中で抜け出そうと抵抗する少年の名前を呼んだ。
「ハル。いい加減観念しろ。こうなった以上、お前に勝ち目はない」
「やーだー、はなしてよぉー!」
首を振り、ハルは両手をめちゃくちゃに動かす。しかし、細い腕ではアキラにかなうわけもない。追いかけっこで疲れていたせいもあって、すぐ動きは止まってしまった。
ようやく大人しくなったハルに、アキラは安堵してハルを横抱きにした。ふわりと身体が浮いて「ひゃっ」とハルが驚いた声を出す。
間近で視線が絡まる。走って赤くなっていたハルの頬が、さらに紅潮した。
「アキラ、はなして、はなしてよ」
「ダメだ。そうしたらお前逃げるだろ」
ハルの懇願を、アキラはすぐさま切って捨てた。
「第一なんだよお前。人の顔を見るなり逃げて。今も逃げようとしやがって。そんなに俺を見るのがいやか?」
ハルは先ほどアキラと顔を合わせるなり、背中を向けて脱兎のごとく走り出した。アキラは呆然と遠ざかる背中を見つめていたが、すぐに我にかえって追いかけた。ようやく懐かれて逃げられなくなったと思った矢先に見せた、ハルの反応。ショックだったし、腹立たしかった。だから、逃げる理由を聞き出すためこうしてハルを捕まえた。
「いやじゃない」
俯きがちになってハルは力なく首を振った。
「じゃあどうしてだ。きちんと理由を教えてくれ。もし俺に非があれば直すように努力するから。ただ、顔を見るなり逃げるのはやめてくれ。俺だって傷つくんだぞ」
「……ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃない。理由、聞かせてくれるな?」
「うん……」
すっかりしょげてしまったハルを連れアキラは、江ノ島西浦まで歩いた。ここならば観光客も少なく、人目もつきにくいだろう。
ハルをおろし、並んで岩場に座った。
「それで、どうしていきなり俺の顔を見て逃げた?」
前ふりもなく直球で切り込むアキラに、ハルはわずかな沈黙の後、重い口を開いた。
「あのね、ぼく最近変なの」
「変?」
「アキラが近くにいるときゅーって胸が苦しいの。どきどきして、顔が赤くなって、身体が乾いちゃいそうな感じになっちゃって……、すごくこわいよ」
「……」
アキラはそっとハルの横顔を見やった。確かにハルの頬は朱に染まっている。そしてそれは俺のせいだと、ハルは言っていた。
「お前それ……」
「だから、アキラ見るのが怖くなっちゃって」
「……失礼だな。俺はお前に優しくしてんのに」
「わかってるよ。でも怖いんだもん……」
ハルは膝を抱えてそこに顔をうずめた。溢れる感情を持て余している。
これは、脈ありだと思っていいんだよな。アキラはハルの気持ちがこちらに歩み寄っている手ごたえを感じた。なんせ相手は精神年齢がまだまだお子様な宇宙人だ。どれだけ好きだと言っても、ハルは友情の好きだと勘違いしてしまうばかりだった。
しかし、粘り強く言い続け、アプローチした甲斐があった。アキラは内心ガッツポーズをする。
初めて本気になった相手なんだ。絶対に逃がしてたまるものか。
「ハル」とアキラは意識して優しくハルを呼びかけた。距離を縮め、頼りない肩を抱き寄せる。
「俺とこうするのはいやか?」
「……ううん」
顔をあげてハルは「いやじゃないよ」と首を振る。
「でも胸がきゅーってなるのは、こわい」
「じゃあそれがなくなるまでこうすればいいだろ。痛いのがなくなったら逃げる理由もなくなる」
「すぐなくなるかなぁ」
「それはお前次第だな」
「うん……がんばる」
ハルからも身を寄せられ、二人の身体は密着する。
間近で見たハルの頬は赤い。アキラはそれに引き寄せられるように唇を当てる。
触れた頬は熱く、慣れるのに時間がかかりそうだ、とこっそり苦笑した。
キスを落とす25箇所(06:薄っすらと色付く頬へと)
PR
この記事にコメントする
カレンダー
03 | 2024/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |
プロフィール
HN:
千早
性別:
非公開
ブログ内検索
P R