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「ハル―、こっちにも水頼む」
「オッケー!」
ユキが持つホースから水を満たしてもらったじょうろを手に、ハルが庭を横切る。真田邸の庭は四季を通じて花が咲いている。肥料などの細やかなところはケイトがするが、水やりに草抜きはユキとハルも積極的に手伝いをしていた。
すっかり手慣れた様子でてきぱきと広い庭の世話をしている二人を、アキラはサンルームのソファで眺めている。俺も手伝えるかと申し出てたが、二人でやればすぐだからと断られた。
ホースで水をまくし、濡れるから。そうユキに言われてサンルームへ避難している。
動き回る二人の息はぴったりだった。なるほど、これなら俺が手伝うまでもないか。それどころか手慣れない人間が入ったら逆に邪魔になるな。
「お邪魔します」
ぼんやり庭を見つめるアキラに、台所からウララがサンルームへ入ってきた。物腰穏やかに「そちら、座ってもよろしいでしょうか?」とアキラが座っているソファに向かい合う形で置かれたチェアを見やる。
「……どうぞ」
「ありがとうございます」
ウララはにっこり微笑みチェアに腰を下ろした。両手は揃えた膝の上に置き、姿勢正しく座っている。
笑顔のウララに対し、アキラは内心気まずい。明るくはしゃぐハルとは違い、ウララは大人しく引っ込み思案なところがある。同じ真田邸に居候している身分だが、アキラは未だにウララの性格を掴みかねていた。考えていることが読みにくい。
なんとなく視線を合わせにくく、アキラの目は庭へ固定された。ここにタピオカがいれば、まだぎこちない雰囲気も和らぐだろうに。もしくはハルたちの水やりが終わって、こっちに来てくれたら。
「――あの」
「な、なんだ?」
いきなり声をかけられ、アキラは驚いて肩が跳ねた。
ウララは相変わらずアキラを見て微笑んでいる。
「アキラさんは、ハルのこと好きなんですよね?」
「………………」
「貴方のハルを見つめる眼が、とても優しそうでありましたから」
「………………」
アキラは唇を内側からきゅっと噛んだ。そうでもしないと反射的に叫びそうになる。俺は、傍から見たら、そんな風に見えてるのか。無意識だったせいで、指摘された今、とても恥ずかしくなってきた。
無言を肯定と受け取り「ハルも、アキラさんのこととても好きなんですよ。よく貴方と出かけた時の話をされていますし」とウララは胸の前で両手を合わせ、楽しそうに語りだす。
「きっと貴方のことが大好きだから、なんでしょうね。わたくし、ハルが幸せそうでとても嬉しいと思います。これからも末永くハルのこと、よろしくお願いいたしますね」
そういって深々と頭を下げるウララに、アキラは慌てて腰を浮かせた。
「お、おい! 頭まで下げるな!」
「それを申し上げられましても……。わたくしにとってハルは同郷の仲間であり、弟みたいなもの。そのお相手の方にも親身にならずしていかがしましょうか」
「わかった。わかったから! だから頭を下げるな勘弁してくれ!」
どうしてハルの星の奴らはこう一歩ずれた奴が多いんだ。アキラは深く首を垂れるウララを止めつつ、早く水やりが終わってハルたちが早く戻るよう、庭に向かって念を飛ばした。このままじゃ、心臓がもちそうにないから。
20のお願い(13.勘弁してください)
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