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※夏樹が渡米していない設定でお送りしています。
「アキラ」
のんびりした時間を過ごしていると、ハルが抱き着いてすり寄ってきた。
甘えるハルに応えたいが、俺は堪えて「ハル、離れなさい」と肩に手を置く。
「どうして? いつもだったらアキラもぎゅーしてくれるよ?」
「そっ、それはそうだが」
思わぬ指摘に俺は声を詰まらせた。当然だ。恋人に甘えられて嬉しくない男がどこにいる。しかし今は勝手が違うのだ。
「アイツに見つかったらうるさいんだよ」
俺が世話になっている真田邸に、夏樹が泊まりに来ていた。今頃、ユキと楽しく談笑しているだろう。だが、心のどこかでこっちを気にかけているに違いない。俺はハルを狙っている狼みたいなものだと認識されている。だから面白くないんだろう、ハルを友人として――また弟として接しているような夏樹としては。さくらちゃんの時は半狂乱になりそうだ。
「だから我慢、な」
「ええ~っ」
案の定ハルはブーイングをした。唇を尖らせて拗ね「いいじゃん、ぎゅーしようよぉ~」と駄々をこねはじめる。
「ぼくアキラとぎゅ~したい~、したい~、したいぃ~!」
「バカ。静かにしろ」
大声を出したら気づかれるだろ。俺は慌ててハルの口を塞いだ。俺が借りている和室とユキと夏樹がいる洋館の部屋は離れているが、それでも慎重にならざるを得ない俺の心境を察していただきたいものだ。
「明日、ケーキおごってやるから。なっ?」
妥協案にじろりとハルは俺を睨む。逆効果だったか? しかし物で釣る交渉以外に効果的な作戦が他には浮かばないぞ。
「もぉ、アキラはわかってないなぁ」
口を塞いでいた手をひっぺ返し、ハルは有無を言わさず再び俺に抱き着く。
「お、おい、ハル?」
「アキラが我慢すればいいんだよ。そうすればぼくはアキラをずうっとぎゅーできるから!」
名案を思いついたように、ハルはしたり顔で一人頷く。
そりゃ、俺が我慢すればいい話ですよ。ハルに抱き着かれたらいつも理性と本能がせめぎ合うんですし。今だってどうにか理性を勝たせようと俺の脳内が必死なんだぞ、こら。
ここで本能が勝ったら。そして万が一夏樹に見られようものなら――いや、ユキでもヤバいけど。
苦悩する俺を余所に、ハルは「アキラ~」と甘えた声を出す。
――これはいい訓練になりそうだ。主に精神力を鍛える意味で。
せめて二人がこちらに来ないまま寝落ちしてくれますように。まだまだ長い夜。俺はそう願わずにいられなかった。
20のお願い(12.我慢してください)
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