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アキラがトランクケースに荷物を詰めていた。江ノ島で数日の休暇を過ごし、また明日から任務で忙しくなる。
出発は明日。今晩は早めに床へ就いておかなければ。
「――アキラ」
準備を終えてトランクケースの蓋を閉めたところで、部屋の扉が開いた。隙間から室内をうかがうようにハルが覗いている。
ハルを振り返り、アキラは小さく笑って手招きをした。
部屋に入ったハルは、アキラの後ろで立ち止り用意が済んだ荷物を見て、眉を悲しそうに寄せた。
「……今度はいつ、江ノ島に来れる?」
「わからない。上司次第だな」
トランクケースを壁際に寄せ、アキラはため息混じりで答えた。与えられた任務を達成しても、また次に新たな指令が送られる可能性は大だ。こうしている間にも、地球にやってきた異星人が増えているかもしれない。
曖昧な答えに、ハルはしゅんと肩を落とした。
水がなくなってしまった花みたいに、萎れてしまいそうな恋人をアキラはどう言葉をかけるべきか考えあぐねた。いくら頭の中の辞書を探っても、貧相な語彙しか見つからない。
困った挙句、アキラは腰を上げ、立ち尽くしていたハルを抱きしめた。
「そんな顔をするな。一生の別れじゃあるまいし。仕事が落ちついたら、また戻ってくる」
「でもアキラいないの……ぼくさみしい」
「俺だってさみしいさ。でもな仕事も疎かにしたくないんだよ」
JFXの件もあり、宇宙人であるハルに心を許したアキラは特例として規則を破った罰則を免除されていた。だが一部の目はまだ宇宙人と繋がりを持つアキラに対して厳しい。
頑なな奴らの態度を軟化させるには、こちらがのし上がるのが一番。非の打ちどころがない仕事ぶりを見せ、幹部に昇格し文句を封じさせる。
しかしハルに我慢しろなんてわがままは言えない。
「だから、寂しくなったら連絡しろ。出られなくても、絶対にこっちから連絡しなおす」
しばらくして、ハルがこくりと頷いた。
「わかった……がんばってね、アキラ」
胸を押さえてハルは笑う。痛む心を隠し、応援してくれるいじらしさにアキラは強くハルを抱きなおした。
20のお願い(11、そんな顔をしないでください)
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