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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 着信画面を見るなり、アキラは電源を切ってしまいたくなった。
 スマホの画面に表示されているのは、ジョージ・エース。アキラの上司だ。両手でピースを作っているふざけた画像は、見るだけで脱力してしまう。これがDUCKの全てをまとめる上官の一人だと思うと複雑だ。
 スマホを持ったまま、出るかどうかアキラは一瞬躊躇した。しかし着信は鳴り止まない。
 アキラは観念し、スマホを耳に当てた。
「ずいぶん出るのが遅かったな、ヤマーダ」
「申し訳ありません。少し手が離せなかったもので」
「そうか。てっきり私はヤマーダに着信を拒否されたものかとばかり思っていたが、杞憂だったようだな」
 わかってて言ってるな。アキラは内心舌打ちをする。絶対こっちが出ようかどうか迷っているのを見通している。
「そんなことありませんよ。なんせ、貴方はDUCKの幹部。私如きが貴方の着信を拒否するわけないじゃないですか。ジョージ・エース」
「ほう。そう評価してくれるかヤマーダ。てっきり私はお前に少し鬱陶しがられているとばかり思っていたが……どうやら不要な心配のようだな」
「もちろん」
 笑顔で言うアキラは、早く着信を終わらせたかった。この後ハルを連れてドライブに行くのだ。今頃準備を済ませて待っているだろう恋人の元に急ぐため「それで用件はなんですか?」と手短に尋ねる。
「ああ、お前とJF1のことについてだが――」
「それでしたら、俺は考えを曲げるつもりはありません」
 穏やかな声がうってかわって冷えた。ジョージ・エースはアキラとハルの交際を黙認しているが、他の上層部はあまり面白くないらしい。時たまハルも宇宙人として、DUCKで捕獲するべきだとつまらない棘をさす。
「誤解しないでほしい。わかっているだろう。私は別にとやかく言うつもりはない」
 ジョージ・エースは口調を乱さず「ただ、心配はしているのだ。お前とJF1のことをな」とアキラを宥める。
「はぁ……。それで?」
「これからお前たちのところに行こうと思う」
「は?」
「そしてその様子をつぶさに観察し、他の幹部に伝えようと思う。なに、お前の仲睦まじさを見せつけてやれば、アイツらもあきらめるだろう」
「別に必要ありません」
 言いたい奴には言わせておけ。多少の妨害なんぞぶっとばしてやる。いざとなったら、DUCKをやめてしまってもかまわない。ハルと想いが通じ合った時からアキラはそう、覚悟を決めている。
 ジョージ・エースの気遣いは野暮に近い。
「だから貴方が来る必要は――」
「ああ、言っておくが、もう江ノ島まで来ているからな」
「へっ!?」
「あと十数分もすればつくだろう。なに、遠くから見守っているだけだから、お前はいつも通りにJF1と接していろ」
「そういうのはせめて事前に言うべきでしょうがアンタ!」
 突拍子もない上司の行動に、アキラは敬語も忘れて怒鳴った。しかしスマホの向こうからは、ジョージ・エースがアキラの怒りを受け流すように笑う。
 アキラは無言で通話を切った。そして急いでハルがいる待ち合わせ場所に向かう。今日はドライブはお預けだ。見られるとわかっていて、行けるか。
 さてどうハルを説得しようか。アキラはいきなり降ってわいた災難に、頭を悩ませた。

20のお願い(4、せめて事前に言ってください)

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