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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 ユキにとって、アキラは友達だ。だけど同時に大人なんだよな、と言う意識を持っていた。年齢はもちろん、もともとの立場も違うし、しっかりと自立している。鍛えている身体も筋肉がついていて、ちょっと羨ましい。こっちも釣りや船長の船でのバイトで体力はついてきた。けれど、アキラみたいになるにはまだほど遠い。
 DUCKにつかまったハルを助けた雄姿は、とてもかっこよかった。
 どんな風に頑張ったら、あんな大人になれるんだろう。

 ヘミングウェイのバイトにきたユキは、テーブル席に座るアキラを見つけた。チャイを傍らに、雑誌を開いてうんうん唸っている。すぐ横のストールで羽を休めているタピオカが「ぐぁ」とアキラの代わりにユキへ挨拶をした。
「こんにちは、タピオカ」
 挨拶を返してから、バックルームでエプロンをつけて、再び店内へ。
 今日は平日だからか、来店客は少ない。カフェスペースにはアキラとタピオカ。釣り具売り場では唯一の来店客に対し、海咲の薀蓄がさく裂していた。彼女に釣りのなんたるかを尋ねたら、一が十になってかえってくる。あのお客さん、大変そうだな。ユキは顔も知らない客に対し、心の中で合掌する。
「ユキ。すまないがタピオカにハムの追加を頼む」
 雑誌から顔をあげたアキラからの注文に「うん、わかった」とユキは早速準備する。冷蔵庫の中にあるサンドイッチ用のハムを取出し、薄切りにする。それを綺麗に皿へ並べ「おまたせ」とアキラとタピオカのいるテーブルへ運んだ。
「悪いが床に置いてくれ。後はタピオカが自分で食べるから。それでいいかタピオカ」
「グワっ」
 床にハムの皿が置かれると、タピオカは軽やかに音を立てず降り立った。ハムをくちばしでつつき、器用に一枚ずつ味わっていく。
 羽を広げ「グワっ」とひと鳴きするタピオカに「どういたしまして」とユキは笑顔で応えた。ほんの簡単なやり取りならユキでも可能になってきた。アキラほどの意思疎通は無理だけど。
「アキラ。真剣な顔して何を読んでるの?」
 尋ねたユキに「ん。……ああ、ちょっとな」とアキラは歯切れ悪い。
「そうだ。この際お前に聞こう。この件に一番詳しいのはお前だし」
「ええっ? どういうことだよ」
 アキラより俺が詳しいことってなにかあったっけ。ユキには見当がつかない。釣りだってアキラが先輩だし、他の知識も長く生きている分、アキラのほうが豊富だ。
「実はいま、悩んでいるんだ。その……ハルのことで」
「ハルの?」
「アイツにプレゼントをするなら、どのようなものが一番いいのか……」
「どうしていきなりプレゼント?」
「そりゃ……決まってるだろ。ポイント稼ぎだよ。ちょっとはこっちの印象もマシになってるだろうが、お前や夏樹と比べたら、好感度とか足りないだろう」
「だからプレゼントでハルの気を引こうってことか」
「呆れただろ、お前」
「そりゃそうだよ。どうして好感度が足りない、とかポイント稼ぎ、とか考えちゃうんだよ」
「悪かったな。こっちは生憎そういうのが身に染みてるんだよ。DUCKではどれだけ宇宙人の情報を集めたか、そのポイントで月々の成績が決まるんだ」
 渋い顔をするアキラを「サラリーマンみたいだね……」とユキは同情する。
「でもさ、ハル相手に、プレゼントでポイント稼ぎとか考えるだけ無駄だと思うよ。ハルの場合、プレゼントの中身よりも、誰にもらったか、の方が重要だと思う。そりゃ多少の好みはあると思うけど。アキラの場合、絶対ハルの嫌いなもの贈ったりしないよな」
「当たり前だ。だからこうして考えてるんだろ?」
「その気持ちだけでもハルは十分喜んでくれるって」
 ユキの言葉に、アキラはいぶかしい視線を送る。慎重すぎるなあ、とユキはさらにひと押しした。
「それにさ、ハルは本当にアキラがいやだったら近づきすらしないと思うよ。でもこの前一緒に釣りをしてたじゃないか。ハル、嬉しそうだったろ」
「あ、ああ……。俺の釣ったシーバス見て喜んでたな」
「だったら大丈夫だよ。ハルはアキラのプレゼント喜んでくれるって。ううん、プレゼントしなくてもその時みたいに、釣りに連れて行くだけでも十分だよ。俺から見ても、アキラと一緒にいるハル、とても楽しそうだし」
「俺といるハルが、楽し、そう……」
 ぼっとアキラの頬がひと目でわかるぐらいに赤くなった。考えなくても、アキラがとても嬉しくなっていると判別できる。無意識に緩む頬につられ、ユキもにこりと笑った。タピオカも「よかったな」と言っているように鳴いた。
 一人と一匹の暖かな視線に気づき、表情を引き締めたアキラはわざとらしく大きな咳をした。
「別に俺は嬉しくなんか……」
「はいはい」
「なんだよその言い方! あーもう、忘れろ! このことは忘れろよ!!」
 むきになっていい返し、アキラはチャイをがぶ飲みする。いつもの落ち着いた大人の風貌はなかった。
 アキラは大人だけど、かわいいところもあるんだな。新たな一面を発見に、ユキはタピオカと目を合わせ、こっそり笑いあう。でもやっぱりアキラみたいな大人になりたい気持ちは変わらない。悩んだり、立ち止まったりしても諦めない。そんな風に大きくなりたい、と赤らんだ頬はそのままにまた悩むアキラを見て、再認識した。

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