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※夏樹が渡米してない。アキハルバカップル成立後前提でお送りしています。
この状況はどうした。
しんと静まり返ったユキの部屋。真ん中では仁王立ちをしている夏樹。ベッドに座ってなりゆきを見守っているユキ。そしてアキラは夏樹の前で座っていた。なぜか、後ろ手にタオルを巻かれた状態で。油断をしていたせいで、抵抗する前に動きを封じられていた。
アキラは夏樹を見上げる。腕組みをして見下ろす夏樹の目は笑っていない。いや、マジで俺なにしたの。身に覚えないんだけど。
「――正直に答えろ」
抑揚がない声で夏樹が言った。
「どうしてハルはさっき、お前を見て部屋を出たんだ」
「そりゃ……まあ、その、なあ?」
アキラは視線を泳がせる。
さっきまで部屋にはハルもいた。今日は四人同じ部屋で雑魚寝をする予定だった。
夏樹、ユキ、ハル、アキラと寝る順番を決めた時、それに異を唱えたのがハルだった。
「ぼく、ユキと夏樹の間がいいなぁ~」
「ハルは、アキラの隣がいいんじゃないの? なぁ、アキラだってそう思うだろ?」
ユキから同意を求められ「……そ、そりゃ、まあ」とアキラが口ごもりながらも肯定する。
その時アキラを見つめたハルの頬が、不意に赤く染まった。もじもじと照れてアキラから視線をそらす。
「うう~、でもぼく、今アキラの側にいると、いろいろ思い出して胸がきゅーってなっちゃうから」
そのままハルは恥ずかしがり、ベランダへと出て行ってしまった。
ハルの投げた言葉は爆弾となり、夏樹のお兄ちゃんセンサーを煽ってしまったらしい。なぜかタオルで腕を縛られ今に至る。
どうしてハルが恥ずかしがったのか、アキラは理由はわからないでもなかった。最近ようやく羞恥心とやらが芽生えたらしい。時にべたつくような触れ合いをすると、ハルは顔を真っ赤にしてこちらの胸を押し、密着の度合いを少なくしようとする。
これまで抱き着くのにも臆してこなかったのを見てきている。だから逆に恥ずかしがるハルは新鮮だった。酷いことをしているわけではない――決して。
「……その反応は心当たりがあるって感じだな」
「どうしてそうなる。それにちょっと待て。どうして俺は今縛られているんだ」
「話の途中で逃げられても困る」
「これ、さっき見た映画に影響されてるだろ。やめとけ。お前だとマジでシャレにならん」
娘のためならどんなことだって厭わず救出に向かう内容の映画を思い出し、アキラは冷や汗を流す。画面の中で暴れていた父親と、目の前の夏樹の雰囲気が重なって見え、焦ったアキラはユキに助けを求めた。
「おい、ユキ。夏樹をどうにかしてくれ」
「ごめん。こういう時の夏樹って、ヘタに止めるともっと怖いから」
「そりゃ俺だって重々承知済みだ。だけどな、おい。この場合俺がかわいそうだと思わないのか、なあ」
「う~ん…………」
しばらく考え込み、ユキはすまなそうに眉尻を下げる。
「…………ごめん」
「お前って本っ当に優先順位がわかりやすすぎるよな! わかってたけど!」
ケイトとハルが最優先。その次に夏樹。きっと俺はその後だ。いや、さくらちゃんがその前に来るのか。どちらにせよ、ユキの中での俺の優先順位は低い。孤立無援の状態に、アキラはがっくり項垂れる。その頭上に「アキラ」と冷たい夏樹の声が降り注いだ。
「もう一度言う。――正直に答えろ」
容赦ない追及の声。答えを吐くまで許さないだろう夏樹の構えに、アキラはうんざりとため息を吐いた。
もうこのシスコンとブラコン兼ね備えた男、なんとかしてくれ。
20のお願い(19.正直に答えてください)
ちなみに見ていた映画は96時間。
あの映画、お父さんマジ強いですよね……。
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