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真田邸リビング。ソファの上にハルが膝を立てて座っている。その横に、アキラが座っていた。二人の間にはティッシュが数枚端を重ねるように広がっている。
「あんまり伸ばすと誰かが怪我するかもしれないからな。ハルもユキに怪我させるのはいやだろ?」
「うん。ヤだ」
「だからそれを前もって防止するんだ。ハル、手を出してくれ」
「はい」とハルは素直に右手をアキラに出した。その手を取ってみると、爪が大分伸びている。
アキラはテーブルに置いていた爪切りを持つ。
「皮膚を切ってしまうかもしれないから動くなよ」
こくこくと頷くハルの爪を、アキラは丁寧に切っていく。ハルに怪我をさせないよう、細心の注意を払いながら。
ぱちりぱちりと音がする。伸びた爪が、敷かれたティッシュの上へ落ちていった。
一本ずつ爪が整えられていくさまを、ハルは珍しそうに見ている。
「ねえ、アキラ。これでユキが怪我したりしない?」
「まあお前の伸びすぎた爪ですることはないな。だが、また伸びてくるだろうからさっきの長さになったらまた言えよ」
「アキラが切ってくれるの?」
「ああ」
「でもアキラ、任務でいないときもある。そんな時はどうしたらいい?」
「……それでも連絡しろ。飛んできてやるよ」
「本当?」
ハルがうつむきがちで爪を切るアキラを見た。
「でもタイヘンじゃない? ユキ言ってたよ。アキラは地球のあっちこっちに行ってるって。地球はおっきい。戻ってくるの、タイヘンだよ」
「それでも、だ。俺に言え」
アキラはハルに念押しする。最近ハルの面倒を見てばかりで、他のやつらにされるのが癪に思えてきた。だったら多少の苦労がなんだ。それぐらい背負ってやるさ。それで、ハルの近くにいられるならな。
「そっか。うん、わかった。また伸びてきたらアキラに言うね」
「それでいい。――終わったぞ」
アキラは爪切りをテーブルに置いた。続いて爪やすりで形を整えられ、ハルの指先は綺麗になっていく。最後に切られた爪を丸めたティッシュもろともごみ箱に捨てられ、作業は終わった。
「ありがとう、アキラ」
礼を言ってはにかむハルに「どういたしまして」とアキラも微笑む。
「それに、これは俺の為でもあるからな」
「アキラのため?」
「ああ、何度も背中を引っ掻かれちゃ、治るものも治らないし、な」
後ろ手に背中をさすり、アキラは含み笑う。
「背中?」とハルは首をひねる。無意識だから、覚えてないのは当然だ。俺を受け入れる時の苦しさで、しがみつくのでもう必死だろうし。
「なんでもない」とアキラは笑う。
「それと、約束だからな。ちゃんと俺を呼べよ。他の奴にさせるなよ」
「わかった!」
元気よく返事をするハルに、アキラも自然な笑顔を浮かべた。
5つの甘やかし【5、ツメを切ってあげる】
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