小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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最近、タピオカは恋人に夢中だ。本部にいる間、暇さえあれば上部にあるプールで二匹、仲睦まじい時間を過ごしている。
水面で恋人に寄り添って浮かぶタピオカに、アキラはいつまで続くかわからないからなとたかをくくっていた。しかし、だんだんとアキラより恋人といる時間が長くなっていくタピオカに、焦りを隠せなくなってくる。こっちは長年バディとして組んできたのに。相棒よりも、ぽっと出の恋人を選ぶのかタピオカよ。アキラは切なくなってくる。
落ち込むアキラの口から、ため息が幾度もこぼれた。
「もう、アキラ~。ため息よくないよぉ」
江ノ島西浦。喧騒から離れた堤防で釣りをしていたハルが、注意した。
「笑って笑って。そっちのほうが楽しいし~」
「放っておいてくれ……」
胡坐をかいて座り、アキラはおざなりににルアーを投げたロッドをやる気なく持つ。今回、江の島への同行を断られたショックを未だに引きずっていた。
「タピオカめ……。まさかあのまま、あのアヒルの卵産むつもりじゃないだろうな……」
「えっ、タピオカ、メスなの? つがいできた?」
「ああ、メスで――つがいだかどうだか……。俺はまだ認めたつもりじゃないけどな」
「アキラ、タピオカに子供出来るのうれしくない?」
「嬉しいか嬉しくないかって言うのなら、まあ嬉しいですけど。まだ……複雑だな」
「複雑? どうして?」
「……こっちのが長い間共に過ごしてきたはずなのに、あっという間に他の相手にかっさらわれた気分だな」
思考しながらハルへ答えていくうち、アキラは在りし日に夏樹が抱えてきた感情の一端が分かった気がした。家族として大事にしていくつもりが、他にさっさと相手を見つけてこられたら、そりゃふてくされたくもなるわ。
魚を釣るつもりもないまま海中を漂うルアーを、リールを巻いて引き寄せる。そのまま片づけを始めるアキラに、ハルが近づいた。
「アキラ、釣りやめる?」
「ああ、気分が乗らない。お前だけでもしてろ。ここにはいるから」
「……ううん。ぼくもやーめたっ」
ハルがリールを巻いていく。海面から出たルアーをつかまえ、アキラの隣に座った。ロッドを傍らに置き「よいしょっ」とアキラに寄り添う。ぴったりと身体をくっつけ、アキラの腕に両手を絡ませた。
「ハル?」
「へへー。タピオカのまね! こうしてぎゅーって寄り添ってたら、アキラさみしくない!」
ハルは、名案が浮かんだ子供みたいに得意げな笑顔を見せた。アキラはきょとんと瞬きをして、つい吹き出してしまう。未だにハルは、こちらの予想を上回るような行動を取ってくれる。
「アキラ?」
唇に拳を当て笑いをこらえるアキラに、ハルが首をかしげる。
「いや、なんでもない」
どうにか表情を取り繕ったアキラは、ハルに「……ありがとうな、ハル」と礼を言った。タピオカの感触とはかけ離れているけど、さみしさは確かに薄れたから。
20のお願い(7、放っておいてください)
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