小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
何も考えずに歩いていた。いや、無意識に考えないようしていたのかもしれない。廊下に響く足音だけが、優輝の耳に届く。やけに急いで歩いている、と今はそれを認識するだけで精一杯だった。
「――っ」
司令室と居住区を繋ぐ階段に足をかけたところで、後ろから腕を引かれた。強い力に身体は容易く引き留めた人物の胸へ閉じこめられる。
驚き顔を上げた優輝を、純吾が心配そうな眼差しで見つめ返していた。
「大丈夫だよ」
純吾があやすように優しい声で言った。ぼんやりした思考で優輝は、何が大丈夫なんだろう、と思う。
「大丈夫。怖くない。怖くないよ」
「……怖い?」
優輝は純吾の言葉に首を傾げた。
「そんなことない。……離せって」
純吾から離れるべく、彼の身体を押そうとした手が震えていた。気づかないのがおかしいぐらいにみっともなく。
優輝は自分の手のひらを不思議そうにまじまじと見つめ、ようやく自分の気持ちを自覚し始めた。俺は純吾の言うとおり、怖がっていたんだ。
優輝は純吾の身体を押していた手を降ろす。自覚してしまうと、大きな感情の波が押し寄せ、不安が増大した。
「……選ばなきゃいけないのはわかってる」
来襲しつづけるセプテントリオンを退け続け、やがて訪れる終末の時。世界が終わる前に人の意志を束ねて救う為、セプテントリオンを作り出したポラリスに会わなければならない。
優輝は悪魔使いのリーダーとして、人々の行く先を決める決断を迫られていた。
実力主義を唱える大和。
平等を目指すロナウド。
二人もまた、優輝に来てくれるよう誘いをかけている。
しかし優輝はどうするべきかまだ決めあぐねていた。
――だって俺は。
開いていた手のひらをぎゅっと握りしめる。震えている情けなさを隠すように。
「だけど俺は、一週間前まで普通に高校生やってたんだ。それがいきなり世界の命運を決める選択だなんて……荷が重すぎるだろ」
「優輝にはジュンゴがいるよ」
純吾が優輝の背中を柔らかく擦った。
「忘れないで。何があっても、ジュンゴは優輝の味方。だから大丈夫」
「本当に大丈夫だって根拠……ないだろ」
「でも護るのは本当だよ? ジュンゴ、優輝護るよ、……絶対に」
たどたどしくも、純吾は躊躇いなく誓いを口にした。そして頭の天辺に温かい感触が触れる。ほんの僅かな時間だったのに、不思議と優輝の中で不安は薄れていく。
握りしめた力が弱まり、指が解れていった。
キスを落とす25箇所 (01:頭の頂点にそっと)
PR
この記事にコメントする
カレンダー
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
プロフィール
HN:
千早
性別:
非公開
ブログ内検索
P R