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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 こんなことをするタマじゃなかった――はずだったんだが。
 燈治は自分のしたことを振り返りながら、両手で掴んでいた七代の肩をそっと押し離した。七代はぼおっと燈治を見上げている。瞬きを数回繰り返し、左手で自身の唇にゆっくり触れた。
 視線がだんだん俯き「……あ」と頬が朱に染まる。あっという間に赤みは増して、耳や首筋まで広がっていく。
「あ、ああ、あの……今……」
「……悪ぃ」
 うろたえる七代に、罪悪感が燈治の胸を刺した。七代の困惑も当然だろう。こっちだってするつもりはなかった。しかし、彼が不意に見せてくれた笑顔が、燈治の自制心をあっけなくぶち壊してしまった。
 触れたのはほんの一瞬。だが、心臓は僅かなキスにも過剰に反応して、心拍数をどんどん上げていく。恐らく、七代も。
 緊張で身を堅くした七代に、どうするか、と燈治は迷った。さらりと流せる空気ではない。肩を掴む手に、力がこもる。
「……っ」
 七代が小さく肩を竦めた。戸惑いがちに燈治を見ようとし、しかしすぐに視線は伏せられて、代わりに伸ばした腕で逞しい胸を押す。
「す、すいません、壇、離してください……。このままじゃ、ちょっと」
「お、おう。悪い」
 燈治は慌てて七代から手を離した。行き場のなくなった手を持て余し、仕方なく頭を掻いた。
 七代は胸元へ戻した手をぎゅっと握りしめた。未だに視線を合わせてくれない。
 そんなに、驚かなくたっていいじゃねえか。いきなりキスしたのは悪かったけどよ。燈治はやるせなくなって、小さくため息をつく。
 それが聞こえたのか、七代の肩が縮んだ。
「あ、あの、違うんです。いやじゃ……ないんですよ?」
「じゃあ、なんで、こっち見ないんだ?」
「それは……わからないんですか? 俺の相棒を自負しているのに?」
 責める口調に「悪かったな……」と口をとがらせた燈治は横を向いた。生憎人の機微を悟るには少々鈍い。いきなり降ってわいた問いだって、混乱気味の思考では答えを導き出せそうになかった。
「もう、壇は変なところで鈍いんですから……」
 今度は七代がため息をついた。長々とこれ見よがしにされて、燈治は「うるせっ。お前だってそうだろうが」と七代を見て言い返す。
「大体お前は自覚ってもんが足りねぇんだよ。誰にでもほいほい優しくしやがって」
「みんな優しいから、優しく返すのは当たり前でしょう」
 ようやく七代が燈治を見た。まだ熱は引いてない顔は赤いままだ。
「んなことねーだろ。お前義王見て見ろよ。絶対あれは優しいとかそんなもんじゃねーよ」
 七代を虎視眈々と狙っている年下の恋敵を思いだし、燈治は苦い顔をする。
「だから……」と言いかけ、燈治の中に七代へキスをした理由がすとんと落ちてきた。
 そうだ。七代は誰にでも優しく接するから。だから見ているこっちは、七代に惚れる奴が増えるんじゃないかと気が気じゃなくなってしまうんだ。ただでさえ、手強い奴がいるのに。これ以上ライバルが増えたらたまったもんじゃない。
 心の狭さを認識し、燈治は自分の必死さに呆れた。同時にそこまでしても、七代を隣に置いておきたい気持ちを改めて確かめる。一人でいたがったあの頃とは、雲泥の差だ。
 燈治は息を吐き出し、所在なかった両手を再び七代へ伸ばす。肩を掴み、そのまま胸元へ七代を引き寄せた。
「だ、壇?」
 いきなり抱きしめられ、七代が慌てる。距離をとろうと胸を押す力を、燈治は七代の背中へ腕を回して阻んだ。
「いいから、しばらくこうしてろ」
 七代の耳元で燈治は囁く。突然の包容に七代は身を堅くして「もう……強引なんですから」と不服そうだ。
「誰かに見られても、知りませんからね」
「わかってる」
 いい加減腹を括らねばならない。名実ともに七代の隣にいるのは俺だと、並みいる強敵たちに思い知らせるには。
 まだまだ騒がしい日は続きそうだな。甘い時間を過ごすにもしばらく苦労が続きそうで、燈治はそっとため息を吐いた。

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