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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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※回帰大円団エンディング後です。主人公はジプスと大学生の二束わらじな設定


 ジプスには膨大な量の本があった。司令室はもちろん、エントランスの壁という壁に本棚があり、本がぎっしりと並べられている。また室内の天井は高く、一冊の本を探すにもかなりの苦労を要した。
「どこにあるのか検索できるのはまだいいとして……、リフトつかなわきゃ取れない本ってどうなんだか」
 優輝はリフトをボタンで操作しながらぼやいた。だが、大学で提出するレポートの資料に使わせてもらえるだけありがたいということか。正直、ジプスにある本の品ぞろえはそこらの図書館より充実している。そして深く内容を知りえるものも多かった。だから、つい頼ってしまう。
「まあヤマトにたこ焼き奢るだけで使わせてもらってるんだから、不満はダメだよな。うん」
 緩やかにリフトは上昇を始める。落ちないよう手すりにつかまり、徐々に高くなっていく目線で司令室を見回した。下から上までほとんどの壁が本で埋まっている光景は圧巻だ。
 リフトが止まったはずみで軽く揺れた。
「おおっと」
 優輝は手すりに摑まる力を強めて、揺れに耐える。ここで落ちたら、骨折どころでは済まない。オレはまだ死にたくないぞ。
 わずかな揺れはすぐに収まり、優輝は本棚に向かい合った。並んだ背表紙を指でなぞりながら、目的の本を見つけた。本棚から抜き出し、目標の達成にほっとする。
 後は降りるだけ――。
 気の抜けたのがまずかった。天井近い場所から覗き込むと、思っていた以上の高さにぞっとする。目を反らしたくても反らせない。まるで、吸い込まれるように。
「あ――」
 手すりにかけていた手が滑った。無意識に身を乗り出していた身体が、リフトの外へ落ちていく。下に待ち受けているのは固い床。
 骨折だけじゃすまない。さっき自分で考えていたことを思い出す。しかし優輝は、とっさに腕で頭を庇うことしか出来なかった。
 このままじゃ死ぬかも。高いところから落ちてだなんて、情けない。優輝は歯を食いしばり、もうすぐ来るだろう痛みに備えた。
 だが予想に反して、落ちた感触はやわらかかった。恐る恐る目を開けた優輝は、落ちたのが床ではなくフェンリルの上だと知った。黒い毛並みの魔獣が優輝の無事を振り返って確認する。
 本棚を蹴って一度高く飛びあがり、フェンリルは足音もなく床へ着地した。そこへ「ユウキ!」と駆け付けた恋人の姿に、優輝は目を丸くした。
「ジュンゴ」
「ユウキ、大丈夫? ケガはない?」
「あ……、ジュンゴが助けてくれたんだな」
 魔獣フェンリルは、純吾がポラリスとの決戦まで長く苦楽を共にしてきた仲魔だ。きっと落ちた瞬間を目撃して、召喚してくれたんだろう。
「サンキュ。お陰で助かった。フェンリルもありがとうな」
 フェンリルの背中をひと撫でし、優輝はその背中から降りた。すると、近づいてきた純吾に前触れもなく抱きしめられた。
「ジュ、ジュンゴ?」
「ジュンゴ、優輝が落ちるのみて、びっくりした。こわかった」
「……ごめん」
 俺は大丈夫だろう。そうたかをくくり、安全確認を怠ったために純吾にいらない不安を与えてしまった。優輝は素直に謝り「今度からもっと気を付けるから」と純吾の背中に手を回した。ぽんぽんと、子供をあやすように優しくたたく。
「ん……」
 純吾が頷き、優輝の首筋に顔を埋める。抱きしめる力も強くなった。落ちた本人より怯えている様子に、優輝は申し訳なくなってくる。
「ジュンゴ」
 優輝はそっとジュンゴの頬を両手で包んだ。きょとんと見つめる目に「オレは元気だろう。ジュンゴが助けてくれたおかげだ。だからもうそんな顔するな」と励ます。
「ん……」
 純吾は手を頬を包む優輝のそれに重ねた。そして自分の手で包み込み、そっと指先にくちづける。触れる吐息がくすぐったかったが、優輝は純吾の好きにさせた。少しでも早く安心するように。


「一応ここは共有スペースなのだかな……」
 司令室から繋がっているエントランスの柱に隠れ、通りすがりの真琴はどうしたものか、と困惑する。二人から醸し出される甘い雰囲気を無視して横切ることもできず、悶々とした。
 せめていちゃつくのであれば、個室でやってくれ。そう願わずにはいられず、二人に背を向けため息を吐いた。


キスを落とす25箇所【16:伸ばされた指先に】

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