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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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熟語で100のお題
03 恋風


 今日の江ノ島も晴天だ。照りつける太陽は、日焼けした肌にはちょっぴり痛い。だけど海を走る青春丸に乗って、海の風を感じているとそんなものは吹き飛んで行ってしまう。今日も気持ち良くて、わくわくする。釣りがしたい。ルアーを遠くまで飛ばして魚を釣りたい。
 青春丸のみよしに、偏光グラスをつけた夏樹が立った。手にはルアーをつけたロッド。初めの一匹を釣る、大事な仕事の始まりだ。
「なつきぃー、がんばれぇー!」
 たもを手に、ハルが夏樹を激励する。それを見て小さく笑い、夏樹はルアーを海面へ投げていった。
 流れるようなフォーム。綺麗に放物線を描いて飛ぶルアー。海中へ沈んだルアーは泳ぐシイラを引っかけて、青春丸へと引き寄せていく。
 ユキは、この瞬間が好きだった。肉眼でもわかるシイラの群れと、役目を果たして誇らしそうに胸を張る夏樹にいつも目が奪われてしまう。だって、夏樹――すっごくかっこいいし。同じことを飽きることなく考えては、食い入るように見つめてしまっていた。
 ルアーを投げて釣り上げた魚を手にして笑うその顔が、ユキは好きだった。本当に釣りが好きなんだなって気持ちが伝わって、こっちにまで笑顔が移ってしまう。
 そしてこうも思ってしまうのだ――そうやって笑う夏樹はかわいいなって。
 かっこいいのに、かわいい。
 ――あれ? 俺、どうしたんだろう。
 ユキは胸を押さえた。なんだか心臓がどきどきしてる。
「あれ? ユキ、どうかした?」
 近づいてきたハルが、ユキの顔を覗きこんだ。
「顔がちょっとヘン。赤くなってる」
「な、なんでもないよ」
 ユキは慌てて首を振り、緩みがちになっている頬の筋肉に力をこめす。そしてたもを握り直し「それよりもはやく仕事仕事」と不思議がるハルを急かした。


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