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熟語で100のお題
02 勃発
シャドウとの戦闘が終わるや否や、陽介が険しい顔をして苦無をしまった。そして無言で日向につかつかと近づく。一方涼しい表情で刀の血振りをする日向は、厳しい視線を受けて首を傾げた。
日向の前でぴたりと立ち止り、陽介は相棒の肩を掴む。
「橿宮……、お前また突っ走って。言っただろあんまり単独で突っ込むのは危険だって」
「結果としては怪我してないからいいんじゃないか」
臆面の欠片もない日向に、陽介は額を手で押さえ、深い溜息を吐いた。どうしてこいつは平然と言ってのけるんだ。どんな危険が潜んでいるのかわからないってのに。
「だーかーらー!」と陽介が顔を上げ、日向の両肩を掴みなおした。
「そうして突っ走るのが危ないっつってんの! せめて遠距離――いや、回復だってしろ。お前はいろんなペルソナ使えてなんでもござれなんだからさぁ!」
「殴ったほうが速い。それに」
睨む陽介を日向も半眼で見据え、反論する。
「第一、シャドウにあえば即ペルソナに頼るお前だって極端だ。消耗だって激しいだろう。俺とお前、どっちもどっちじゃないか。決めつけ良くない」
「おーおー、言ってくれるじゃんか橿宮さんよぉ」
日向から手を離し、陽介は大袈裟に肩を竦めてみせる。
「そんなこと言って、大怪我しても知らねえからな。……せっかくこっちは心配してんだってのに」
半分拗ね気味でいう陽介に「何を言ってるんだ」と日向は眉を潜めた。
「俺は大怪我とかにはならないぞ」
「どうしてそう断言できる?」
「花村が助けてくれるからだろ?」
ごく自然に、当たり前のように言う日向に陽介は一瞬息が止まった。固まってしまった陽介に、日向は「……違うのか?」と重ねてきいた。
――ああ、もうこいつは!
無条件にこっちを信頼している日向に、陽介は腹立たしくも嬉しくなってしまう。だけど、素直に気持ちを表現するのもしゃくだった。
だから陽介は日向に背中を向け、言い放つ。
「違わねーよ。バーカ!」
「……何あれ、勝手に喧嘩勃発させて、勝手にいちゃついてて」
戦闘後の軽い屈伸運動を終え、千枝は呆れ顔で日向と陽介を見ていた。傍から見てれば青臭い場面を見ているようなものだが、本人たちは至って真面目なのが始末に負えない。
千枝の側で同じく陽介たちの様子を眺めていた雪子が「いつものことじゃない」と笑った。
「放っておこうよ千枝。気にしててもどうしようもないし」
「……それもそっか」
考えるだけ、こっちが疲れるだけ、そして当てつけられるだけだ。千枝はさっさと思考を切り替える。そしてまだまだ続く道中を考え「おーい、お二人さん。さっさと先に進もうよ」と日向たちを大声で呼んだ。
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