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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 七代から居場所を聞いた燈治は、ドッグタグへ向かった。マスターの元で受ける依頼を決め、それから洞へ探索に行く手はずになっている。
 しかし今日は、ドッグタグの入り口に仁王立ちしている少女が燈治の行く手を阻んだ。扉の前を陣取り、腕を組んだ少女――輪は、燈治を見つけるなり不機嫌を露わにする。
「……んだよ、日向。そこにいたら中に入れねえだろ」
「当たり前だっ! 入れないようにしてるんだからなっ!」
「……はあ?」
 輪が取る行動の意味が分からない。燈治は七代と共に行動している時間が多いせいか、自然にドッグタグの常連客になっていた。しかしそれまで輪が今回の行動を取ったことはなかった。
「どういう意味だよ、そりゃ」
「絢人と、あの眼鏡から聞いたんだからなっ」
 意図を聞く燈治を敵意剥き出しで睨み、輪はまくし立てた。
「お前、千馗サンを苛めてるんだろ! たまには千馗サンが痛がるようなこと、無理矢理させてって言うじゃないか! そんなこと、ボクの殿候補にさせるなんて絶対許さないからなっ!」
「あいつら……」
 子供相手に何を吹き込んでいるんだ。燈治はドッグタグにいるだろう情報屋二人に呆れる。
「否定しないってことは……やっぱり本当なんだな!」
 黙る燈治に、輪はますます疑いを深めてしまった。組んでいた腕を解き、燈治へ指を突きつける。眼の色が、直情的な怒りを映して燃えていた。
「覚悟しろ! 今このボクがお前に引導をたたきつけてやる!」
「あー、もう違う! 俺は千馗を苛めたりなんてしてねえよ!」
 どうして七代を傷つけなければならない。燈治としてはその逆でいつだって彼を護りたいと思っている。
「だいたい、それが本当だって千馗に聞いて確かめたのかよ。もう中にいるんだろ」
 燈治は輪に尋ねた。輪が入り口で燈治の前に立ちふさがっているのは、七代がいる中へと通さないためだろう。
「そ、それは……」
「返事に困るってことは、聞いてないんだろ」
 言葉に詰まってしまった輪に、燈治は言った。
「……ってことは、香ノ巣や鹿島の情報を鵜呑みにしてそのまま突っ走ったってところか」
「ううう、うるさいっ!」
 図星を突かれた輪の顔が真っ赤になる。自棄になったように「絢人の情報は確かなんだぞ!」と喚いて胸元のブレザーへ手を伸ばした。
「だから、間違ってなんかないんだ!」
 内ポケットから手製の火薬玉を取り出し息巻く輪を「あのな、日向」と燈治がやや温度の冷めた声で言う。
「確かに香ノ巣や鹿島の情報網は凄いと俺も思う。けどな、その与えられた情報を鵜呑みにするのはよくねえと思うぜ」
 今もなお解決の兆しが見えない呪言花札の件に、燈治はいつも出てくる情報に振り回されていた。聞くもの見るもの、その全てが馴染みがないもので、時には挫けそうになった。だけど、七代がいたからこそ自分なりに考え、自分なりの答えを見つけられたと、燈治は思っている。
 学んだのは、情報をただ盲目に信じるのではなく、きちんと探り、真実を見つけること。それが今の輪には欠けているように思える。
「もし、千馗の口から香ノ巣たちの言っていることが聞けたら俺もちゃんと認めて謝るさ。けどな、それもないのにただ責めるのは筋じゃねえだろ」
「……お前」
「――輪、早く戻らないとせっかくのフレンチトーストが冷め……って壇?」
 輪の後ろで扉が開き、騒ぎの原因が顔を出した。一足触発の空気でにらみ合う、剣呑な雰囲気に「……えっと」と困った表情で輪と燈治を交互に見やる。
「もしかしておれ、邪魔しました?」
「いや、助かった」
「ならいいですけど……」
 七代は心配そうにその場から動かない輪の肩に手をおいた。
「輪、外は寒いですし中に入りましょう。何があったか知らないですけど、ビックリしたんですよ。いきなり外へ飛び出していっちゃうから」
「――コイツとだなんて、絶対嫌だっ!」
 輪は七代の手を振り払い、燈治に向かって思いっきり舌を出した。そして何処へと走り去ってしまう。
「あっ」と止める声を掛ける間もなく、姿が見えなくなった輪に、七代は困惑しきった表情を燈治に向ける。
「何があったんです? ……もしかして苛めてたりとかしてないでしょうね」
「違うっての……」
 輪に続き、七代にまで疑いの眼で見られ、燈治はうんざりした。今日は厄日かと呪いたくなる。
「ったく本当騒がしい毎日だよな……」
 後ろ頭を掻きながら、燈治はため息を吐く。面倒なことになりそうな事態に、どうしようかと燈治は自分なりに考え始めた。



続きます


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