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寄せた顔は、唇が重なる寸前で止まった。
「……おい」
「なんですか?」
「なんで、目を開けてるんだ。お前」
「ええっと……、ダメです?」
困惑気味で尋ねる七代の表情を間近で見つめていた燈治は、物憂げな息を吐くと同時に距離を取った。ダメなわけではない。だが、こっちは目を閉じていて、七代は瞼を上げたまま。想像するとこっちが間抜けっぽく見えてしまう。
内心が透ける燈治の反応に「ご、ごめんなさい」と七代が肩を小さくした。
「でも、目を閉じちゃうと……気配感じてつい緊張しちゃって」
誤魔化すように笑い、七代は両手の指を弄ぶ。
「だから、壇の顔見れるんなら目を開けたままでもいいかなーって」
「バカなこと言ってんじゃねえよ……」
一歩ずれている七代に、燈治はどっと疲れてしまった。緊張感も、ムードもあったもんじゃない。気力が萎えてしまった状態の燈治に、七代もまずいと思ったようだ。両手を握りしめ、意を決したように言った。
「えっと、えっと……じゃあ、触れる寸前宣言してくれませんか。そうしたら、おれも、ですね、心の準備が出来るって言うか! ええ!」
「……本当だな」
「も、もちろんですとも!」
「なら、お言葉に甘えるとすっか。……七代」
気を取り直して燈治は七代の両肩を掴んだ。その力強さに身体が跳ねた七代は「ひゃい!?」と上擦った声を上げる。がちがちに固まってしまった状態に敢えて目をつむり、燈治は「目、閉じろよ」と命令した。
「……は、はいっ」
七代はぎゅっと瞼を閉じたが、力が入りすぎていた。唇もまた力一杯に引き結ばれている。
それでも逃げない七代に、燈治はさっきまでの気落ちも忘れて、小さく笑った。右手を頬へ滑らせ、手のひらを這わせる。
「……いいか?」
問いに七代はこくこくと頷いた。準備は万端だと気配で必死に訴えているが、緊張は解けていないのは明白だ。
燈治は七代の唇を親指の腹で撫でた。すると一際大きく七代の肩が跳ねる。
だから燈治は少しでも早く七代の緊張がとけるよう、閉じられた瞼に柔らかく唇を押し当てた。
今度こそキスが出来るようにと懇願の意も含めて。
キスを落とす25箇所(04:閉じた目の上に)
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