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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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前回の続きっぽい感じで
やっぱりP4Gのネタバレになるかもなので隠してあります。
つづきはこちらからどうぞー



 正月から降り始めた雪は、一気に稲羽市を真っ白にした。天気予報では冬休みの間は雪の確率が高いらしい。そのせいか、主な除雪作業は交通に重要ような道路ばかりだ。それ以外にまで手を回していたら、手が掛かりすぎてしまうんだろう。
 その結果、車の行き来が少ない道路や細道は、雪に埋もれがちだ。近隣の住民が朝から雪かきをして出来た山があちらこちらに見える。
 固めたらかまくら作れそうだよな。横目で雪山を見やりながら、陽介はダウンジャケットのポケットに手を突っ込んだ。
 稲羽の冬は厳しい。生半可な服装で外に出たら、僅かな時間で身体が冷えきってしまうのは、去年の冬で体験済みだ。
「今日もさっぶいな……。橿宮、大丈夫か?」
 白い息を吐き、陽介は隣を黙々と歩く日向を見た。出かける際陽介に巻かれたマフラーに鼻先を埋め、地面に視線を落としている。背中が丸くなっているせいで、いつもより頭の位置が低く見える。
「橿宮?」
 もう一度声をかけた陽介に「聞こえてる」と短い返事が飛んだ。
「寒い?」
「いや、ちょうどいいぐらいだ。マフラー取りたい」
「それはダメ。また熱がぶり返すかもしんないだろ。またぶっ倒れたいのか。菜々子ちゃんや堂島さんが戻る前に完治しておきたいんだろ。だったら我慢しろ」
「……わかった」
 後ろで結ばれたマフラーへ伸ばしかけた日向の手が、緩慢とした動作でコートのポケットに戻される。
 こりゃ目が離せないなと、陽介はやきもきした。お金がかかるからと渋る日向を押し切り、タクシーを呼ぶべきだったか。
 正月早々、風邪を引いて日向が倒れてから、早くも四日経つ。何とか起きあがれるほどに回復した日向の付き添いを買って出た陽介は、病院に続く雪道を歩き続けている。
 積もった雪は、車や通行人の行き来で固められていた。油断していると、足が取られ滑って転びそうだ。
「診てもらうついでに菜々子ちゃんのお見舞いも行くとか考えてるの?」
「……んん、行かない」
 日向がゆっくりと首を振った。
「心配させるし、風邪移すのよくない」
「ですよねー」
「ただ、おじさんにはちゃんと伝えておく。どうせバレるだろうから」
「あー……、看護師さん越しに伝わりそうだもんな。そうしておいた方が面倒ないか」
「そういうこと……」
 日向の言葉には覇気がない。まだ安静が必要だろう。帰ったらまた布団に寝かせておかないと。それから、病院で診察を受けている間、ジュネスでバイトをしているクマにまた必要なものを買わせておかねえとな。
 日向に歩調を合わせていても、少しずつ陽介が前を歩いてしまう。ゆったりした歩みは、日向が体調を崩している証だ。
 やっぱり今からでもタクシーを呼ぶべきか。雪は降っていないが、やっぱり病院までの道のりを病人に歩かせるのは忍びない。
 肌を突き刺す寒さに、陽介は意を決し「橿宮」と遅れがちになっている日向を振り返って――その姿が雪で滑って転ぶ瞬間を見てしまう。
「橿宮!?」
 慌てて陽介は後戻りをし、仰向けに倒れた日向に駆け寄った。日向は微動だにせず、ぼんやりと曇り空を見上げている。
「頭痛いけど、雪が気持ちいいから……もうここで寝ていい?」
「寝るなよ。絶対寝るなよ! 寝るんだったら家の布団で寝なさい!!」
 曖昧な返事をしたら絶対寝るだろうと予測し、陽介は強い口調で制止した。寝たら一発で天国行きになっちゃうだろうが。
「ほら、起きろって」
 陽介はかがんで、仰向けになったままでいる日向の腕を掴んだ。腰を上げて引っ張り、強引に日向を起こさせる。
 ぼんやりしたままの日向に「タクシー呼ぶから」と陽介は一方的に決めた。携帯電話でタクシー会社に一台手配してもらう連絡を取る。現在地の住所はわからなかったが、目に見える目印をいくつか口にすると、相手はわかったらしい。すぐに向かうと返事があった。
「もうすぐタクシーくるから、それで病院行こう。なっ」
 コートについた雪を払い、陽介は「ほら、立った立った」と日向をさらに引っ張りあげる。
「ん……」
 生返事に、やっぱまだ熱あるな、と陽介は思った。首のヘッドフォンを外し、民家の外壁にもたれる日向の頭にかけた。
「これでちっとは暖かいだろ?」
「……」
 無言で日向は装着されたばかりのヘッドフォンを外した。そのまま陽介の胸へと押しつける。
「ちょ、その反応は傷つくんですけど!」
「だって、耳がくすぐったい。ぞわぞわする」
 残ったヘッドフォンの感触を消すように、日向は両手で耳を擦る。そして熱っぽい目を陽介に向けた。
「ぞわぞわするんなら、陽介にチッスされたほうがいいかな。――ほら」
 顔を横に向ける日向に「ほらって催促するんじゃありません」と陽介はがっくり肩を落とした。
 まるで酔っぱらいみたいじゃねえか。陽介は転んだ拍子に頭をぶつけたかと心配になった。幸いこれから向かう先は病院だ。いざとなったら、診てもらおう。
「はやく」
 急かす日向は強情で折れそうにない。
 観念した陽介は周辺を見回す。人はいない、タクシーがくる気配もまだない。
「治ったら、仕切直しだかんな」
 熱だしてる状態で無理させられないこっちの気持ちも察してほしい。心からそう思い、陽介はひんやりした日向の耳朶へ掠めるようなキスをした。


キスを落とす25箇所(05:ひんやりとした耳朶へ)
 

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