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ドラマティカルマーダー 紅雀×蒼葉です。
ネタバレとR18ゲームである性質上性的描写はありませんが、隠しておきます。
つづきはこちらからどうぞ。
平凡から家に戻る途中、紅雀にばったり出会った。髪結いの仕事を終えたばかりだと言う紅雀は、当たり前のように俺と同じ方向へ歩き出す。どうやら今日も、ばあちゃんの夕飯を食べに行くつもりらしい。
「別に来るのは構わねーけど、そんなしょっちゅうだと手間賃貰うからな」
俺は半眼でじろりと紅雀を睨んだ。
「わかってるって。俺だっていつもご馳走になってるだけじゃ悪いと思ってるからな。今度タエさんには上物の酒を持っていくさ」
「俺にはねーのかよ……。ばあちゃんばっかりずりぃ」
むっとする俺に紅雀は「お前はすーぐ酔っぱらうからな」とからかって笑う。
「酔わねえし」
「じゃあ前に飲んだとき一番最初につぶれたのは誰だったかな」
「もう今日は来んな」
「怒るなって」
「怒ってねえし!」
否定しておいてなんだけど、俺の口調はまるっきり怒っているときのそれだった。でもわかっててからかう紅雀が悪い。
「蒼葉。あーおーばー」
むすっと先を歩く俺の背中に、苦笑じみた声で紅雀が呼んだ。歩調を早め少しだけ開けた距離は、紅雀が大股に歩くだけであっけなく縮んだ。
「悪かったって。今度お前にはアイスを奢ってやるから」
「……トリプルにトッピングつけてもいいなら、許してやる」
「はいはい」
くそっ、まるっきり子供扱いじゃねーか、と俺は毒づいた。紅雀のこともだけど、酒よりもアイスに心揺られる自分自身にも。
大通りを抜けたところで「そうだ、蒼葉。明日はあいてるか」と紅雀が唐突に尋ねた。
「明日? 予定ねーけど……。平凡のバイトも休みだし」
答えた俺に、紅雀は神妙な顔をして「そうか」と僅かにうつむいた。顎に手をやり、紅雀は「明日、家にこないか」と誘われる。
「蒼葉さえよければ、約束のアレ、明日にしようかと思って、な……」
「あ、ああ……」
俺は微妙に動揺し、首の後ろへ手をやった。そこにはフードで隠してある髪がある。
約束とは、紅雀に俺の髪を切らせることだ。
俺の髪は普通と違い、感覚が通っている。触れられたりするだけで、痛みが走るのだ。だからずっと誰にも触らせなかったし、髪を切るなんて以ての外だった。
だけど俺は、紅雀になら髪を切ってもらってもいいかなと考えている。幼なじみで、親友で、恋人でもある紅雀なら――、少しぐらいの痛みなど我慢できる気がする。
「……いいよ」
俺は俯きながら承諾した。隣で知らず緊張していたらしい紅雀が「そうか」と力が抜けるような息を漏らした。
「なんか……、ドキドキすんな」
ずっと髪が長かった俺にとって、短髪は初めてだった。もうすっかり髪を切る、という選択肢が頭からすっぽ抜けているので、妙にそわそわしてしまう。
「安心しろ。俺もだ」
「ちゃんと、男前に切ってくれよ」
「わかってるさ。俺の腕前は見事なもんだから、信用しろよ」
「……自分で言ってるし」
自意識過剰、と俺は小さく吹き出した。
「本当だぞ」と紅雀も笑い返し、俺の手を掴んだ。
立ち止まる紅雀に手を引っ張られる形になって、俺は足を止める。
「……紅雀?」
「安心しろ。もし少しでも痛みがあるようなら、また日を改めるつもりだ。お前に無理強いはさせたくないからな」
「……お前って、本当、バカだな」
かすかに除かせる不安を、俺は笑い飛ばしてやった。第一、俺は嫌だったら、髪を切る話が出る時点で突っぱねている。
俺は紅雀の前に立ち、にっと口元を大きく上げた。
「お前の腕、信用してる。だからちゃんと男前にしてくれよ」
「蒼葉……」
「返事は?」
紅雀がきょとんとした目で俺を見つめ、そして呆気にとられた表情を崩した。
「わかった。きっちり約束を果たしてやる」
「――よし、上等」
笑う俺の首筋に、紅雀が手を伸ばした。繊細な手つきで俺の髪を一房掬い、恭しく口づける。
髪からの感覚は薄くなっている。けども、紅雀の唇に触れられたそこからは甘い痺れが伝わってくる。
もしかしたら、もう味わえないかもしれない感覚。今更だけど、ほんのちょっと名残惜しかった。
キスを落とす25箇所(03:髪を一房拝借して)
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