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前の添い寝小話燈治視点バージョン


 燈治はふと目を覚ました。枕元の携帯電話を掴み時刻を確認する。まだ夜明けにはほど遠い時間だ。
 携帯のフリップを閉じ、寝返りを打った燈治はベッドの端へ手を伸ばす。その下に敷いた布団に、七代が寝ている――筈だった。
 だが、伸ばした手に彼が寝ている感触が伝わってこなかった。少し端に身を寄せ、さらに腕を伸ばすが今度は冷たい敷き布団にぶつかってしまう。
 燈治は肘を突いて上体を起こした。のぞき込めば彼が寝ていると思っていたそこは、綺麗に布団が畳まれたままの状態になっている。
「あいつ……まだ起きてんのか?」
 燈治が床に伏す前、七代は「OXASに出す書類がありますから」と隣の部屋でパソコンと睨めっこをしていた。かなりの量があって終わらせるのにも時間がかかるから、と先に寝るように促された。
 寝る前に携帯で見た時間を考えると、あれからかなり時間が経っている。不安になり、燈治はベッドから抜け出した。
 足音を忍ばせて部屋を出た。七代が書類と格闘している隣からは明かりが漏れている。どうやら、まだ終わってないらしい。
 扉を開けようとした燈治は、一瞬躊躇する。仕事をしているのに、いきなり入ってきたら集中が途切れるんじゃないかと。七代の邪魔をするのは、燈治にとってやりたくないことの一つに入る。
 だが心配でもあった。普段泣き言も言わずいつも笑っている七代。自分すら知らずに疲労をため込んで熱を出したこともあった。
 様子を見るだけでもするか。燈治は細心の注意を払い、そおっと薄く扉を開いて、室内の様子をのぞき見る。
 まず見えたのは部屋の真ん中においてある卓に向かう七代の背中。丸くなってパソコンの前に突っ伏し、ゆっくりと肩が上下している。
 燈治は音を立てないよう扉を開けて、部屋に足を踏み入れた。周りに散らばる書類を踏まないよう注意し、腰を屈めて横から七代の様子を窺う。
 燈治が思っていた通り、七代は眠っていた。よく見れば、交差した腕を枕にした彼の目元には、薄く隈が出来ている。最近は仕事だ学校だバイトだとろくに休んでいないから。
「ったく……がんばりすぎんだよ、お前は」
 体調を崩さないためにも、自己管理にきちんとした休息は重要だ。燈治は七代の肩を軽く揺さぶった。
「おい、千馗……千馗」
「ん…………んん…………う」
 しかし七代は目を覚まさず、意味をなさない声を漏らすだけだ。肩を揺らした燈治を煩うように眉間に皺を寄せ、反対方向へ顔を向けてしまう。
「千馗、風邪引くぞ。寝るなら布団で寝ろ」
「…………んぅ、ん………………」
「千馗」
 気持ちいい表情で寝ているせいか、多少気が引けたが、燈治はさっきよりも強く肩を揺すった。
 七代の頭が緩慢と上がった。殆どくっつきかけている瞼を掌で擦り、ようやく七代が目を覚ます。
「なんなんれすか」
 とろりと眠気に浸かった眼で七代が言った。呂律が回っていない口調で「おれはれすねえ、まらレポートがあるんれすよ。じゃまはしにゃいでほしいんれすれけろねえ」とまくし立てる。頭も前後にかくかくと動き、もう半分寝かけているのは明白だ。
「おーおー、わかったから寝ろ」
 燈治はパソコンを閉じた。文句が七代の口から飛び出る前に背中と膝裏へ腕をつっこみ、乱暴に抱き上げる。
「うわっ、あ」
 いきなり身体が宙に浮かび、驚いた七代は燈治の首にしがみついた。好都合だ、と燈治は腕の中の相棒が状況を理解する前にさっさと部屋を出て、隣の寝室へ戻る。
 いつも七代が寝ている敷き布団を飛び越えて、まだ温もりが残っているベッドに抱えていた身体を下ろした。
「燈治さん」
 さっきよりもはっきりした声音で七代が言った。流石に意識が覚醒したようだ。
「おれまだレポート残ってるんですって」
 七代が手を伸ばし、燈治の肩を押す。
「……それでもお前は寝ろ。またぶっ倒れたらどうすんだよ」
 肩を押す七代の手首を掴んで引きはがした燈治は、自らもベッドに入り込み、起きようとする身体を抱きしめて閉じこめた。
 もし倒れたりしても面倒ぐらいいつでもみてやる。しかしそれ以前に燈治は、七代が辛い状態になるのは嫌だった。
 疲れがたまっている七代の抵抗は些細なもので、それすらも次第に大人しくなっていく。見れば、もう殆ど瞼は閉じかけていた。
 微睡む七代の瞼や鼻梁に唇を落とし、優しく耳元で名前を呼ぶ。
 七代が眠りに落ちるまで、燈治の手は彼の背中をあやすようにゆっくり叩き続けていた。


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