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小話色々。只今つり球アキハルを多く投下中です、その他デビサバ2ジュンゴ主、ものはら壇主、ぺよん花主などなど
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 身のこなしは素早いが、一度捕まえればこっちのもんだ。
 江島神社参道の脇で、アキラは多少乱れた息を整えた。武術もたしなんでいるし、これでも鍛えているつもりだった。だがわずかな追走に息を切らすようでは、まだまだ未熟なんだろう。トレーニングの量を増やすか。
 そんなことを思いながら、アキラは腕の中で抜け出そうと抵抗する少年の名前を呼んだ。
「ハル。いい加減観念しろ。こうなった以上、お前に勝ち目はない」
「やーだー、はなしてよぉー!」
 首を振り、ハルは両手をめちゃくちゃに動かす。しかし、細い腕ではアキラにかなうわけもない。追いかけっこで疲れていたせいもあって、すぐ動きは止まってしまった。
 ようやく大人しくなったハルに、アキラは安堵してハルを横抱きにした。ふわりと身体が浮いて「ひゃっ」とハルが驚いた声を出す。
 間近で視線が絡まる。走って赤くなっていたハルの頬が、さらに紅潮した。
「アキラ、はなして、はなしてよ」
「ダメだ。そうしたらお前逃げるだろ」
 ハルの懇願を、アキラはすぐさま切って捨てた。
「第一なんだよお前。人の顔を見るなり逃げて。今も逃げようとしやがって。そんなに俺を見るのがいやか?」
 ハルは先ほどアキラと顔を合わせるなり、背中を向けて脱兎のごとく走り出した。アキラは呆然と遠ざかる背中を見つめていたが、すぐに我にかえって追いかけた。ようやく懐かれて逃げられなくなったと思った矢先に見せた、ハルの反応。ショックだったし、腹立たしかった。だから、逃げる理由を聞き出すためこうしてハルを捕まえた。
「いやじゃない」
 俯きがちになってハルは力なく首を振った。
「じゃあどうしてだ。きちんと理由を教えてくれ。もし俺に非があれば直すように努力するから。ただ、顔を見るなり逃げるのはやめてくれ。俺だって傷つくんだぞ」
「……ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃない。理由、聞かせてくれるな?」
「うん……」
 すっかりしょげてしまったハルを連れアキラは、江ノ島西浦まで歩いた。ここならば観光客も少なく、人目もつきにくいだろう。
 ハルをおろし、並んで岩場に座った。
「それで、どうしていきなり俺の顔を見て逃げた?」
 前ふりもなく直球で切り込むアキラに、ハルはわずかな沈黙の後、重い口を開いた。
「あのね、ぼく最近変なの」
「変?」
「アキラが近くにいるときゅーって胸が苦しいの。どきどきして、顔が赤くなって、身体が乾いちゃいそうな感じになっちゃって……、すごくこわいよ」
「……」
 アキラはそっとハルの横顔を見やった。確かにハルの頬は朱に染まっている。そしてそれは俺のせいだと、ハルは言っていた。
「お前それ……」
「だから、アキラ見るのが怖くなっちゃって」
「……失礼だな。俺はお前に優しくしてんのに」
「わかってるよ。でも怖いんだもん……」
 ハルは膝を抱えてそこに顔をうずめた。溢れる感情を持て余している。
 これは、脈ありだと思っていいんだよな。アキラはハルの気持ちがこちらに歩み寄っている手ごたえを感じた。なんせ相手は精神年齢がまだまだお子様な宇宙人だ。どれだけ好きだと言っても、ハルは友情の好きだと勘違いしてしまうばかりだった。
 しかし、粘り強く言い続け、アプローチした甲斐があった。アキラは内心ガッツポーズをする。
 初めて本気になった相手なんだ。絶対に逃がしてたまるものか。
「ハル」とアキラは意識して優しくハルを呼びかけた。距離を縮め、頼りない肩を抱き寄せる。
「俺とこうするのはいやか?」
「……ううん」
 顔をあげてハルは「いやじゃないよ」と首を振る。
「でも胸がきゅーってなるのは、こわい」
「じゃあそれがなくなるまでこうすればいいだろ。痛いのがなくなったら逃げる理由もなくなる」
「すぐなくなるかなぁ」
「それはお前次第だな」
「うん……がんばる」
 ハルからも身を寄せられ、二人の身体は密着する。
 間近で見たハルの頬は赤い。アキラはそれに引き寄せられるように唇を当てる。
 触れた頬は熱く、慣れるのに時間がかかりそうだ、とこっそり苦笑した。


キスを落とす25箇所(06:薄っすらと色付く頬へと)

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 小さな物音が聞こえ、大地は目を覚ました。
「……んあ?」
 垂れかけたよだれを手で拭いながら、こたつ板に突っ伏していた身体を起こした。どうやらこたつの暖かさに陥落してしまったようだ。
 恐るべしこたつの威力。見たいテレビ番組あったのに。あっけなく眠気に屈してしまった己を嘆きつつ、大地はそれでもそこから出ようとしない。いやだって、出たら寒いじゃん。もう番組終わっちゃったみたいだし、このままこたつにあたり続けちゃる。
 テレビの画面に映ったニュースをぼんやり眺めながら、こたつに手を入れた。心地よい暖かさに身体の力が緩む。あとはみかんがあったら、最強なのになぁ。
「……はい」
 こたつに顎を立てる大地の目の前に、みかんが山盛りになったカゴが置かれた。視線をあげると、純吾が「食べて」とすすめる。
「うっわ、ナイスタイミングじゃん! サンキュー」
 大地は喜びさっそくみかんをひとつ手に取った。皮をむき、さっそく一房口に入れる。甘酸っぱさに大地はしみじみと幸せをかみしめる。やっぱりこたつにみかんは最強だよな。
「ダイチ、幸せそう」
「そっりゃこたつにみかんだぜ? これで幸せじゃなきゃなんなのよ」
「うん。こたつにみかんは強い。ジュンゴも好き」
 純吾は口元をわずかに上げて、頷く。そして大地の後ろを通り、そのはす向かいへ膝をついた。そして持っていたブランケットを広げる。
「ジュンゴ?」
「……静かに」
 純吾が小声で大地をたしなめる。
 大地はひょいとこたつから身を乗り出した。そこにはすっかり寝入ってしまった優輝がいた。テレビの音にも、大地と純吾の話声にも、全く起きる反応を示さない。
 優輝の上半身はこたつから出ている。このままでは冷えてしまうだろう。純吾は優輝の身体が冷えないよう、ブランケットをかけた。
 続いて、近くの座布団を引き寄せ二つに折る。細心の注意を払って優輝の頭を持ち上げ、その下に折った座布団を入れた。そして持ち上げた時同様、そっと頭を下す。
「ん…、んん……」
 枕代わりの座布団の感触が落ち着かないらしい。優輝が幾度か寝返りを打った。やがて、自分なりに落ち着ける場所を見つけ、再び眠りを深くする。
「………………」
 無言で純吾は優輝の身体からずれたブランケットをかけなおす。肩まできっちり隠れるよう位置を調整した。
「……うん。これで大丈夫。優輝、寒くない」
 ようやく満足したのか、純吾は眠り続けている優輝の頭を優しく撫でた。
 一連の様子を横からずっと見ていた大地は、いたせりつくせりだよな、と思った。
 せっせと優輝に尽くす純吾の顔は見れなかった。だけど優輝の寝顔見て笑ってるんだろうな、と大地は容易に想像がついた。
 何だか砂吐けそう。大地はみかんをもう一房くちに放り込み、酸っぱい味で胸焼けしそうな気持ちを誤魔化した。


 

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前回の続きっぽい感じで
やっぱりP4Gのネタバレになるかもなので隠してあります。
つづきはこちらからどうぞー

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 寄せた顔は、唇が重なる寸前で止まった。
「……おい」
「なんですか?」
「なんで、目を開けてるんだ。お前」
「ええっと……、ダメです?」
 困惑気味で尋ねる七代の表情を間近で見つめていた燈治は、物憂げな息を吐くと同時に距離を取った。ダメなわけではない。だが、こっちは目を閉じていて、七代は瞼を上げたまま。想像するとこっちが間抜けっぽく見えてしまう。
 内心が透ける燈治の反応に「ご、ごめんなさい」と七代が肩を小さくした。
「でも、目を閉じちゃうと……気配感じてつい緊張しちゃって」
 誤魔化すように笑い、七代は両手の指を弄ぶ。
「だから、壇の顔見れるんなら目を開けたままでもいいかなーって」
「バカなこと言ってんじゃねえよ……」
 一歩ずれている七代に、燈治はどっと疲れてしまった。緊張感も、ムードもあったもんじゃない。気力が萎えてしまった状態の燈治に、七代もまずいと思ったようだ。両手を握りしめ、意を決したように言った。
「えっと、えっと……じゃあ、触れる寸前宣言してくれませんか。そうしたら、おれも、ですね、心の準備が出来るって言うか! ええ!」
「……本当だな」
「も、もちろんですとも!」
「なら、お言葉に甘えるとすっか。……七代」
 気を取り直して燈治は七代の両肩を掴んだ。その力強さに身体が跳ねた七代は「ひゃい!?」と上擦った声を上げる。がちがちに固まってしまった状態に敢えて目をつむり、燈治は「目、閉じろよ」と命令した。
「……は、はいっ」
 七代はぎゅっと瞼を閉じたが、力が入りすぎていた。唇もまた力一杯に引き結ばれている。
 それでも逃げない七代に、燈治はさっきまでの気落ちも忘れて、小さく笑った。右手を頬へ滑らせ、手のひらを這わせる。
「……いいか?」
 問いに七代はこくこくと頷いた。準備は万端だと気配で必死に訴えているが、緊張は解けていないのは明白だ。
 燈治は七代の唇を親指の腹で撫でた。すると一際大きく七代の肩が跳ねる。
 だから燈治は少しでも早く七代の緊張がとけるよう、閉じられた瞼に柔らかく唇を押し当てた。
 今度こそキスが出来るようにと懇願の意も含めて。


キスを落とす25箇所(04:閉じた目の上に)

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ドラマティカルマーダー 紅雀×蒼葉です。
ネタバレとR18ゲームである性質上性的描写はありませんが、隠しておきます。
つづきはこちらからどうぞ。

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